第14話 目撃
「唯花さん近いです……」
帰り道は、
その道すがら、
繋いだ手(
肩と肩が結構頻繫にぶつかる距離。
信号待ちのタイミングなどで、
「
「……」
また、
手を繋ぐ、距離を詰める、そういった普遍的な接触は当然しているのだが、その間、つまりは
触れているほうは、ただただ不安である。
超不安である。
さっきから距離だけは近いのに、二人の間に一切の会話が生まれていない。
「衣織」
ふと、
ようやくコミュニケーションが取れた、と結構嬉しく思う
この際だから、もうちょっとお触りを自重してもらおうかと考えてしまうあたり、彼女はまだ
「
え、なに急に。
唐突な質問に、
……そ、そりゃあ、私は今まで友達ができたことなかったんだから、もちろんそれ以上に踏み込んだ恋人なんてできたことないですし。
恋人いない歴=年齢ですし。しょ、処…………経験なんてないですし。
…………そう考えると、私、かなり重いかもしれない。
そんな思考でいると、自分にそういう魅力がないのかもしれないとか、そういえば先月二キロ太ったんだっけとか、夜更かししてるせいで肌もクマもすごいし……とかどんどんネガティブな方向へ流れていく。
――そもそも、私は恋人がほしいのだろうか?
ふと、そんな自分への問いが降ってきて……
すると、瞬時に私はとある女子生徒の顔が浮かんできて、
だから、思わず「え?」と大きな声で自分に疑問符を投げかけた。
「え、ってどうしたの急に。前髪の話だよ。
「えっ、あっ、ま、前髪の話!? びっくりした、そっちの話か……」
嚙み合わない会話に、今度は「え?」と返したのは
けれど「なんでもないっ! こっちの話!」と焦った様子で制されて、言及する余地はなかった。
「そ、そうなの。昔からなの。もうずっと髪がもっさりしちゃうタイプで、美容師さんにも迷惑かけたなあ……」
「今度
「え、本当? 全然自分でやったことないから是非……」
その女子生徒の名前がふいに
が。
「……どうしたの
「うえっ!? ななななんでバレた!?」
身体は正直である。
ビクビクと震え、あわあわと口元が勝手に遊びだす。しかも「バレた」と自分で言い出してるあたりがなんとも間抜けである。
「
「うう……これも昔からなんです。正直すぎるっていうか、冗談も通じないっていうか……。このせいで私友達できなかったまであります……」
「そうなんだ。でも、今は友達ができた。だからその性格も案外悪いものじゃないかもしれないよ?」
「どうでしょうか……。高校卒業した後も人間関係に失敗しそうで怖いです……」
「失敗したなら、こっちに戻ってくればいい。こっちは
凛とした声だった。
ゆっくりと目を瞑って、その優しい言葉の輪郭を辿って、内部に触れて、核を咀嚼する。温かくて優しくて、どこまで
「嘘がつけない
目を瞑った世界で、
それと同時に、
その言葉を一心に受け入れ、後ろ向きな自分を振り向かせるには充分すぎる時間があった。
目を開けば、
彼女も自分と同じで目を瞑っており、優しく
え。
なにこれ。
そんなことを考えている間にも
――あ、キスだこれ。
そう
唇と唇が接近していく。
驚いたのは「キス」と認識した途端、抵抗することもなく自分からもそれを求めて彼女の口元に近づいていったことだ。
なんの脈絡もなく
二人はやがてひとつに――
「あああ――っ!? お姉ちゃんなにやってるのおおおおお――!!!」
二人が雰囲気ぶち壊しな声に振り返ると、そこいたのは、今にも泣きそうな表情で
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