第6話 陰キャ少女は二度喉を鳴らす
議論再開。
「――えっと、どこまで喋ったっけ……? ああ、そうだ。
「……えっと、今から言うことは悪い意味で捉えてほしくないんですけど」
悪い意味には捉えてほしくない。
そう言うと、
が、そんな少し重くなりだした空気のなか、一人の少女がゆるゆると声を出す。
「
ゆるっと
「――うえっ、け、敬語……がどうしましたか?」
「敬語なんて使わなくていいいんだよー? 別にユカたち、偉いわけでも年上なわけでもないしー。てか、友達だしー」
「と、友達だなんて……。嬉しいんですけど、でもでもタメ口に慣れてなくて……」
「んー? 慣れてないのー?」
「……はい。……クラスメイトにタメ口で話しかけたら『は?』って言われたことが過去にありまして……」
へえ、と頷きながらも深く過去の失敗談を聞き出そうとはしない
その距離感が心地よくて、
また、そんな百合百合しい空気を察知して、ぽっとほのかに顔を赤くして二人を見つめる
またまた、そんな三人に蚊帳の外にされてちょっとだけ不満そうな
「もう、そうやって話逸らすから進まないんじゃん。
聞き分けのない生徒にお説教をするような口調だ。
議論の舵は、
「はい、
先ほどと同じ発言をしたというのに、四人を囲む空気から重苦しい要素が綺麗さっぱり取り除かれていた。
……と、制服のポケットが微かに震えた。
スマホのバイブレーション。
これ以上議論を引き延ばすわけにもいかないので、ポケットからちょっとだけスマホを出して、着信内容を手短に確認する。
画面のポップアップは、メッセージアプリによるもの。
「新着メッセージがあります」の下部。そこには、つい先ほどアカウントを交換した少女からの短い文章が送られてきていた。
思わずばっと顔をあげると、
目が合うと彼女は、ぱくぱくと口を動かして
……それは、どこまでも純粋で、どこまでも
が
ん
ば
れ
口の動きだけで読み取れてしまった
いやこれもう、惚れちゃうでしょ……。
頬を拭う。
唇を噛む。
ごくんっ——と唾を飲み込む。
「私は――」
* * * * *
「まず私は、もうちょっと冷静に状況を把握したい」
そう言い放つと、三人は揃って首を傾げた。
「冷静にってどういうこと?」と聞かれる前に、
微かな場の空気の変化すら、今は彼女の敵ではない。
「私は、
同じ問題に巻き込まれてる
そこで、思わずといった態度で
「ちょっと待って。それってもしかして、『あたしたちとはもう関わりたくない』とか考えてる人がいるかもしれないって言いたいの?」
「
それに、と
「ナチ、『悪い意味で捉えてほしくない』だよ」
「ごめん、続けて……」と頭を下げる
「だからまずすべきことは、今目の前にいる
その後で、男子メンバーにも確認をとる。告白に失敗したぐらいで仲を切る選択をする人間なんてそうそういないだろうけど、一応確認をとる。
そのうえで、打てる策を考える」
ここで
「以上です……」と外したはずの敬語が戻ってきて、と思ったら一気に疲れが襲いかかってきた。
あれ……? さっきまで堂々としてても全然平気だったのに、今はもう死にたくなってるんですけど……。
というかというか、なんか気づいたらお通夜みたいな空気になってるんですけど。
というかというかというか、こんな空気にしたのって私だからどうにか収拾つけないとつけないとつけないとあうあうあう……。
混乱しだす
やらかしたかな……と視線をあげると、不安そうな
唇を噛み、瞳には
「打てる策っていっても具体的には、なにをするの?」
ひゅっ、と勝手に身体が勝手に息を吸った。
どう返答するべきか悩んでいると、そこに別の論点を持ち込んだのは、
「ナチ、冷静になりなって。
「そうね。
悲しげな彼女を見ていると、
唾を飲みこむ。
だが、先ほどとは違って、まったくもって勇気が湧いてこない。
そうしているうちに、
「まあでも、方針は決まったよね! まずは女子メンバーでのスタンスの確認、そのあとで男子メンバーにも同じことをする。きちんと状況確認できてから動き出す。すごく冷静な方針だと思うよ! いやあ、それにしてもあたしには思いつかない考えだったなあ! あたしいっつも突っ走っちゃう癖があるし、なにかに熱中すると周りが見えなくなっちゃうところあるから!」
けれど返ってきたのは、困ったような笑顔だった。
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