19
「残った
集中しているのか、
当たり前のように
「なにそれ。そんな話、初耳なんだけど」
「そうだろうな。二年ほど前、
伯烏からの説明を聞いて、果朶は、そうだったんだ、と噛み締めるようにして呟いた。几園の肩越しに、拡大鏡を覗き込む。
乳白色をした晶汽の内、いくつかが、青や灰色に染まっていた。
……ふと。
疎外感が込み上げた。
自分はきっと、ここにいるべきではない人間だ、と思った。
──五年間。
五年間、果朶は学院から遠ざかっていた。
それは、研究に携わる者にとっては、長すぎる年月だ。
五年もあれば、最新だった研究結果は『古い見識』に姿を変える。
未知だった事柄が次々に判明し、それまでの『当たり前』は上塗りされて、新たな『当たり前』が周知される。
そんな流れが、一体いくつ興っただろう。果朶は、とっくに乗り遅れている。
「どうしたの? 果朶さん。体調悪い?」
俯いた果朶に、声を掛けたのは几園だった。
彼はとっくに仕分けを終えて、人の良さそうな双眸で、果朶の顔を覗き込んでいる。
「ん、大丈夫。なんでもない」
「そう? 無理はしないでね! ここ、地下だから。長くいると、気分が悪くなりやすいと思うし」
果朶は黙って微笑んだ。
断ろう、と思った。見学が終わったら、
「最近は、
果朶の内心を知らない伯烏は、淡々と説明を続けている。
伯烏の視線の先には、
姿勢正しく作業机の前に座した四汪は、漆喰の小箱に向かって、
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