終了! 解散!
「“我は死の神なり。荒ぶる亡者よ、生有る者を喰らいつくせ”」
———
変化は、空中に投げ出されたオリジンの真下。
私が合わせた両手を徐々に離して円を作るに従い、発生した亀裂の奥から『奈落』が漏れ出る。徐々に大きく開いていく『奈落』からずるりと伸びたのは、黒紫の禍々しい
そんな腕が、落下してくるオリジンの脚を掴む。
それだけでは終わらない。
大きく広がり始めた『奈落』からは次々と手が伸び、オリジンの身体を握りつぶし、四肢を捥ぎ取り、粉々に砕いて奈落へと引きずり込んでいく。
これらの手は、私が討伐してきたモンスターの成れの果てだ。
巫女系
死の神は、あざ笑うかのように果てた命を弄ぶ。
『
このスキルがあるからこそ、私はなるべく多くのモンスターを討伐しているようなものだ。
円を作っていた手を再び戻していくと、亡者の手は奈落へと返っていく。
当然、跡形もなく木っ端微塵となったオリジンの破片も奈落へと吸い込まれ、私が両手を合わせると同時に完全に消え去った。
オリジンのドロップアイテムだけをその場に残して。
『
『ただいま、レイドモンスター:
『
「討伐、終わったわよ」
「えぇ……」(ドン引き)
ボス討伐のアナウンスを聞きながら、使った武器やドロップアイテムを拾い上げる。
武器を放りだして戦うことが多いから、あとから回収がちょっと面倒なんだよね。
ドロップアイテムは……スタチューの方と大きくは変わらないけど、コストが800近くあるあたりなかなか悪くはない。
『センコウ』の方に送って加工しようかな。
「えっと、イザヨイさん?」
「なに?」
「強すぎません? 私が半分削るのに20分ぐらいかかったのに、残りを削り切るのに1分かかってないですよね……」
「まぁ……時間を掛け過ぎると良くないかなって。ちょっと急いだのよ。あ、スキルの説明とかはしないわよ。
「ぁうっ」
どうやら図星だったようで、聞きたかったことを先に潰されたヤヤメさんは、可愛い声を漏らしながら口を開いたり閉じたりしている。
「じゃ、じゃあせめてステ振りとか参考にさせてくれませんか? 視聴者さんもかなり気になっているみたいで」
配信用のウィンドウをちらちらと見ながら聞いてくるヤヤメさん。
私の……『イザヨイ』のあれこれを聞き出そうというコメントが多いのだろう。
ステ振りかぁ。
まぁそれぐらいならいいかな。ステ振りを真似したところで、『稲荷空狐』や『伊弉冉』が手に入る訳でもない。
それに、私の軽戦士ビルドはすでに大勢の人がやっている。
「AGIとSTRに成長補正を入れているわ。分かるとは思うけど私は『
「それであれだけの火力が出るんですね!」
「もちろん武器の性能もあるけど」
「やっぱりそうですよね……えっと」
ウィンドウを見ながら質問を考えている様子。
ちらちらと視線がこちらとウィンドウを行ったり来たりし、言ってもいいかどうか迷っているようだ。
「その、もし可能だったらなんですけど……」
「何かしら」
「私とフレンド登録してくれませんか!?」
そう来たか……。
うーん……
だって同接1万超えとかいう、なかなかすごい配信者っぽいし?
声とか可愛いし?
女の子とゲーム友達とか、男子高校生的にはかなりアガるよな?
あ、
しかし……
『イザヨイ』はソロ専門。誰かとつるんで攻略なんて姿は想像できない。
『センコウ』の方だったら良かったんだけど、残念だ。
「申し訳ないけど、フレンド登録はナシで」
「あっ……そっか、そうですよね……」
途端にシュンとして項垂れるヤヤメさん。
なんか俺が虐めているみたいだな……。
そういう反応に弱いから止めてほしい。
「フレンド登録はしないけど……またいつか、どこかで会ったらその時はよろしく」
「っ!? はいっ!」
今度は一転して、パァッと明るい表情となったヤヤメさん。
こう見てみると普通に可愛いな……。
変な約束をすると墓穴を掘りそうだし、今後はさらに『イザヨイ』での振る舞いに気を付けないとね。
そんなこんなでヤヤメさんとは解散し、私はさっさとログアウトする。
配信を見た過激派の視聴者がこの場に突ってこないとも限らないからね。
『イザヨイ』は昔からよく決闘を申し込まれるから。面倒なことに。
こうして私の初の動画出演は終わったのだった。
———この日の配信がものすごい反響を呼び、全世界に注目されることになるとは、この時は思いもしなかった。
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