本編
裏ボスさんは、バレないようにひた隠す
まえがき
『アネックス・ファンタジア』を書いている間に思い付いたものを文字にしたものです。
『アネックス・ファンタジア』が更新されるまでの時間にでもどうぞ。
多少需要があればこっちの続きも書きますので、評価やコメントしてくれるとありがたいです(_ _)
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一体いつからだろうか?
曰く———このゲームには、『裏ボス』と呼ばれるプレイヤーがいる———
詳細を知る者は少なく、『ラスボス』ではなく『裏ボス』と呼ばれているのにも理由もはっきりしていない。
滅多に人前に現れず、ランキングには登場しない。しかしその一方で、半数の高難易度モンスターのデータに初回討伐者として名前が記録されている。
その他にも、炎のブレスを吐き出すだとかプレイヤーの魂を喰らうだとか……嘘か真かも分からない噂はたくさんある。
ただ一つ、一致していること。
それは、『常軌を逸した強さ』を持っているということだ
♢♢♢♢
「ギュオォォォォォォォッ!」
あるゲーム内のとある場所に、空気を震わせるような咆哮が響き渡る。
と同時、その声の主である見上げるほどに巨大な漆黒のドラゴンは、樹の幹のように太く強靭な腕を振り上げる。
それを冷静に見つめる、一人の女性アバターの姿があった。
比較的高い身長に白銀の髪を結い上げ、汚れなど一切無いと言わんばかりに輝く純白の毛並みを持つ九本の尻尾と大きな狐耳が美しい。
仮面を被っていて素顔は見えないが、誰もが羨むほどの抜群のスタイルを持っているのは、ゆったりと身に纏う艶やかな着物の上からでも分かる。
そんな彼女は、ドラゴンの咆哮すらそよ風とばかりに一切怯むことなく———ゆらりと影が揺れ、その姿は完全に消え去った。
ドラゴンの腕が地面を砕くも、そこに彼女の姿はない。
妖しい青白い炎が宙に軌跡を描き、その先———ドラゴンの背後に彼女は現れる。
「っ!」
「ギュオォォッ!」
刹那———彼女が握る大太刀が宙を滑り、ドラゴンの翼が地に落ちる。
たった一刀で、巨大なドラゴンの翼を斬り落としたのだ。
それだけでは止まらない。
フッ……と小さく息を吹くと、青白い炎の塊が矢のように放たれ、ちょうど振り返ったドラゴンの目に直撃し、その視界を奪う。
ドラゴンが声を上げるよりも早く、青白い炎を宙を駆け、次の斬撃が襲い掛かる。
対するドラゴンも巨大な腕や尻尾を振るい、破壊を振り撒く。地面を抉り、木々を薙ぎ倒し、端から見ればハリケーンが直撃したかのような惨状だ。
しかし、闇を彩る青白い炎には掠りもしない。
それどころか、彼女が刀を振るうたびにドラゴンの身体が少しずつ削れていき、HPもみるみる減っていくのが分かる。
そして———
「ギュオォォォォォォ———」
ドラゴンは断末魔を上げながら崩れ、ポリゴンとなって徐々に消えていく。
一度も被弾することなくドラゴンの討伐を成し遂げた彼女は、ふぅっ……と息をつき、両手に握る大太刀を鞘に納めた。
『
『ただいま、レイドモンスター:
『
「初討伐、ね……これでまたデータブックが一つ埋まったわ。レアな素材も大量だし、頑張った甲斐があったわね」
そう独り呟いた彼女は、散らばったドロップアイテムを回収し始める。
とその時、獣人故の鋭敏な聴覚が、複数人のプレイヤーの足音を捉えた。
新種のモンスターを求めてわざわざこんな秘境にまで来たのに、プレイヤーに囲まれては本末転倒だ。
他のプレイヤーの目に触れられる前に、さっさとその場を後にする。
「くっそ、もういない!!」
「はっや!? もう討伐してんのか!? せっかく未討伐モンスターの近くで張ってたっていうのに!」
「間に合わなかったか……」
「いやまだ間に合う! さっきアナウンスがあったばかりだから近くに居るはず!」
「
待たない。
大体……『
しかも『裏ボス』とまで呼ばれる超有名女性アバターの中身が男だなんてバラされたら、界隈の掲示板でなんて言われるか分かったものではないから……。
『イザヨイ』は誰かとつるむようなキャラじゃないし、みんなが追い求める『裏ボス』さんは、神秘的で正体不明ぐらいが丁度いいのさ。
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