第14話
コテージに侵入されたと思ったら、いきなり人殺しだと言われる。日辻さんはどんな気持ちだったのだろう。そんなことは事件を解決したいだけの私にとっては関係ないものだが。
ただ、さすがに「はいそうです」などとすぐに認めることはなかった。彼は反論を始めた。
慶太郎「え、僕のことを人殺しだと言うのですか?なんで急にそんなことを…それに、僕が殺したなんて証拠はどこにもないのに、いきなり犯人はあなたですなんて、いくらなんでも酷すぎません?日野さん」
彼の言っていることは当然ではある。証拠の一切もなく人殺し呼ばわりされて平常心を保てる方が異常だろう。私がここで引き下がることを本当は期待していただろう。しかし、タイムリミットが迫っている以上、それどころではない。それに、証拠だって集まったのだ。ここまでして引き下がる理由は、私には無かった。
響「証拠。えぇ、ありますとも」
私ははっきりそう答えた。それの証明のために、蟹江さんが残したダイイングメッセージを見せようと思った。しかし、その前にしたいことがあった。
響「まぁ、証拠は後で見せてあげるので、まずはトリックについて話しましょうか」
慶太郎「トリック?なんのことですか」
彼はとぼけるようにそう言った。
響「トリックはトリックです」
怒られても仕方ないような、挑発的な言い方をしてから…
「響疑問に思いません?私、今あなたのコテージにいるんですよ?誰からも招待されなかったあなたのコテージに」
と推理に話を持っていく。
日辻さんは「疑問も何も、僕のコテージにいることはそんなにおかしいですか?」と言った。それに対して、私は「むしろ、おかしいと思わないのですか?私いますよ?ここに。しかも、私、ドアからも窓からも入りませんでしたよね?」と返した。
そう、私は正面からは入っていない。かといって、窓を突き破ったわけでもない。では、どこから入ったのか?それは、クローゼットだ。こうやってトリックを実行してから気がついた。クローゼットは、犯人にとって都合が良くなるように、物をなくして広くなっていたのだ。
こうすると、ある事実にたどり着く。そこはまた後で話すとして、トリックだ。私は、「じゃ、今からトリックについて話しますね」と言った。「いらないんですが…」と迷惑そうだったが、「そんなこと言わずに、ほら」と無理やり誘導した。
そのために、クローゼットの床を一部外し、クローゼットに穴を作った。こうすると、トリックの正体が見える。
響「よく考えられましたね。こうすれば、白昼堂々と殺すことにはならない。人目につかない状態で殺せるのですから」
そこまで言って、私は穴の中に入った。暗かった。そして、彼を呼んだ。
響「こっちに来てください。まだ話があるので」
今回の事件で仕掛けられたトリック、それは、地下を通るトリックだ。言うなれば、星座山のコテージは、殺人のために配置されていたわけだ。
この地下移動は、このようにして成立していた。星座山は中央のメインコテージと、そこを囲む十二個の宿泊用のコテージという配置になっている。分かりやすく例えると、アナログ時計だ。中央から針がでていて、十二個の数字で囲まれる。星座山と同じようになっていた。
そして、地下を移動するメリットは、目立たない以外にもある。倉庫にすぐ行けるのだ。倉庫はメインコテージにあるが、実はここが地下に繋がる中心の場所となっていたのだ。
これのどこがメリットなのか、疑問に思うだろう。ここで思い出して欲しいのが、水田さん殺害の段階での出来事だ。彼女のコテージだが、何故か金庫が開いていた。しかも、中身は無かった。これが、この地下の構造と関係してくるわけだ。
水田さんは全身を縄で縛られていたわけだが、その縄がどこから来たのかということになる。その回答がこれだ。元々倉庫にあった縄をひとつ持ち出す。それで彼女を絞殺し、全身をその縄で縛る。その後、金庫にあった縄を取り出し、倉庫の元からあった位置に戻す。この時、置き方の問題で、一度元からあった縄を動かした。私が倉庫で違和感を感じた理由はこれだ。
こうする理由だが、おそらく数を合わせるためだ。もしこまめに数をチェックする人がいたら都合が悪い。だから、怪しまれないように、元から用意していたのだろう。
このようなトリックを使うことで、四人を殺害できたわけだ。
響「最初から計画されていたのでしょうね。誰かしらを操らないと、ただの参加者のあなたがこんな事件起こせませんもんね。それじゃあ、今からあなたが犯人だという証拠を見せてあげますよ」
そんな私の発言に対して、日辻さんはこう返した。
慶太郎「もういいよ!認めるよ!犯人は僕だ!四人を殺した侵略者は僕だ!」
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