第9話
あまり調べていない状態で、他の人たちも一度メインコテージに集めた。調べていないというよりも、調べられる範囲があまり広くないせいで調べようがないという感じだろうか。
何とか全員集めることができた。今朝死体を見て他人を信用できなくなったようで、なかなかコテージから出ない人もいて、本当に苦労させられた。
全員集まったところで、私は本題を切り出した。
響「ここにいないことから、おそらく皆さん察しがついたと思いますが、水田さんが死にました」
誰一人として、その事実には驚かなかった。いないことは見れば分かるし、そこは問題ではなかった。私は続けて「全身が縄で縛られていたことから、おそらく他殺だと思われます」と言った。
このことに、明らかな動揺を見せた人物が二人いた。一人は蟹江さんだ。
正治「な、何が他殺だ!体を拘束したぐらいで断言できるわけがないだろうが!」
蟹江さんは声を荒らげてそう言った。それでも、私は冷静さを保った、悪く言えば冷酷な言い方でこう言った。
響「そこまで言うなら自分の体でも使って試してみては?腕までしっかり縛ったうえで浴槽に自ら入る。これができるとでも?」
一織ちゃんに止められて、私は引き下がった。実際やりすぎたとは思うが、ずっとあんな態度とられてたから仕方ないよね、と自分に言い聞かせた。
もう一人の動揺していた人物は、早乙女さんだ。彼女の場合、恐怖のあまり動くことすらままならないという感じが近いだろうか。それまでがシンプルに偉そうな人という印象で、今は動けないマネキンみたいな人になった。
そんな彼女に、シンプルな疑問がぶつけられた。
一輝「本当に侵略者なんているんでしょうか。もし早乙女さんが犯人で、それを誤魔化すために『侵略者』という架空の犯人をでっち上げたなら、彼女がいる限り事件は終わらないかもしれません」
その疑問は、一気に早乙女さんへの疑いを強めた。彼女は自分は殺していないと主張したが、まともに話を聞いてもらえなかった。その結果、彼女が犯人だと決めつけられてしまった。
基本的には全員が多少は申し訳なさそうだったが、弓木さんは「ま、こうしておけば大丈夫でしょ」と言いたげな様子だった。蟹江さんも「お前が悪いんだ」と考えていそうだった。
指示を出されて、バイト四人で、早乙女さんを拘束するための道具を探すことになった。そこで、初めて倉庫に入った。とにかく広かった。やたらと整理整頓されていたのもあるだろうが、それにしても広かった。
さすがに都合よく求められているものはないと信じていたが、都合よく縄が置いてあった。
愛香「この縄…水田さんを縛っていたものと同じでしょうか」
その発言は、私たちに新たなる謎を与えた。彼女は犯人なのか、犯人に利用されているに過ぎないのか…。ただ、私はもっと気になることがあった。やたら倉庫が綺麗だった。それに、明らかに通路が確保されているように見えた。
それはそれとして、私たちは縄を持って戻ることにした。置いていこうと考えはしたが、今そんなことをしては疑いが広がってしまうという考えがよぎってしまい、持って行ってしまった。
私たちが戻ってすぐに、縄を取り上げられてしまった。そのまま、彼女は椅子に括り付けられて、一切の自由を奪われた。そのまま、残りの人たちをリードするように、蟹江さんは脱出しようと言い出した。
私はつい感情的になってしまい「あんた、人を勝手に殺人鬼呼ばわりして、そのうえで自分ばかり助かろうと考えるなんて正気なのか!」と怒鳴った。蟹江さんは、「こんな奴を信じれるかよ!こんなところで怯えているぐらいならさっさと出た方がマシだ!」と言い返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます