My Buddy![とりあえず完結]

麓出 奈士

 白い羽が舞っている。ふわふわと空中を漂っている。

 私はツヤツヤとした床に仰向けに寝転びながら羽が落ちてくる様子をぼうっと見つめた。

 まるでシェイクされたスノードームみたいに羽は不規則に右へ左へと揺れながら、ゆっくり床に降り積もっていく。真っ白な海が出来上がり、私は棺の中の死者のように羽に埋もれていく。

 遠くではオルゴールの優しい音色が微かに流れていた。聞いたことないはずのに、すごく懐かしい、優しい音色。それが耳元をくすぐってとても心地いい。

 そうして羽を見つめているとだんだん眠くなってきた。私は目を閉じて、微睡に身を任せる。

 不意に一枚の羽が頬に落ちた。その瞬間、痛いほどの熱が走る。

 頬に手をやると赤黒いぬらぬらとした液体が指先にへばりついていた。

 心臓が大きく揺れる。血だ。

 そう認識した途端、遠くのオルゴールがけたたましい電子音に変わった。

 追い立てるように鳴り響く音に心臓が早鐘を打つ。私は起き上がって床を見た。

 さっきまで羽で埋め尽くされていた床一面に血溜まりができている。

 血溜まりは不気味に光っていて、手を持ち上げるとまるで靴の裏にくっついたガムみたいに手のひらにへばりついた。

 ああ、ダメ。やめて。やめて!

 私はパニックになりながら必死で後退った。それを阻止するように血溜まりから無数の手が伸びてきた。地獄の底から這い出たような禍々しい手が私の足へ絡みつく。

 ピピピ…ピピピ…。 

 電子音が狂ったように繰り返される。

 手は私を血の海へ引きずり込もうとする。

 ピピピ…ピピピ…。

 身体がずぶずぶと血溜まりへと沈んでいく。

 息ができない。いや!いやだ!やめて!

 抵抗虚しく意識が遠のいていく。

 ピピピ。

 血溜まりへ引き摺り込まれる寸前、電子音が一際大きく耳元で鳴り響いた。

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