巣立ち①

ピピピピッピピピピッピピピピッ……


目が覚めた。いつも、何度も聞いた目覚まし時計の音だ。起きなきゃ。


だいぶ瞼が重たいけど目を開けなきゃ。


あれ?どこだ?ここ?


目の前には見覚えの無い天井。


プシュー……


あ、これはコネクタが解除される音だ。てことはボクはコネクタで寝てたのか?サーチアライフ、SAの方が言いやすいな、にコンバートしてた覚えは無いけど。


鉄で出来た寝心地の悪いベッドの様なコネクタから起き上がる。周りを見渡してみると見覚えの無い殺風景な部屋。少し先に小さなテーブル。その上に映像を写っぱなしの写真立て。近づいて見てみると、そこにはお父さんとお母さん、そしてボクが3人で写った写真。そして写真の右下にはお父さんの書いた文字が。


『愛してる』


そうだ……お父さんとお母さんは……。


どっと溢れ出した涙はどうやって止めていいか分からない。たぶん生まれてから今までで1番多くの涙が溢れた。


泣いてばかりもいられないな。涙は相変わらず止まらないけど。

でもボクも生まれてからもう18年、実活動時間も15年になる。いつまでも子供じゃ無いんだ。何よりこれからは一人で生きていかなきゃならないんだから……。

やばい、また涙が出てきた。


とりあえず涙はほっといて周りを確認しなきゃ。


部屋自体はあまり広くはない。それだけにここにある物は全て一瞬で確認出来た。


まずは壁側に設置されたふたつのハンガー。ハンガーと言ってももちろん服をかけるハンガーじゃない。コンバートして無い時のSAを保管、管理するハンガーだ。そのハンガーに収まったSAが2体。そしてそのすぐ横にジェネレーターが2つ。

まぁこの辺は当たり前だよな。nonaggression server、普段はNサーバーと呼んでるけど、から色んなアライフやSAのパーツや武器なんかのレシピをダウンロードして、それをゲノムを使って作り出すツール。

SAは探索中に破壊された時なんかの予備の意味があって2体。

ジェネレーターはもし故障してしまった場合、ひとつしか無かったらもう何も作り出せなくなるからだ。


そしてなんと言っても嬉しかったのが、本体の体で睡眠を取るためのベッド。さらにその上にふかふかの布団があった。


ぐうぅ~……


不意にお腹が鳴った。泣きすぎたのかな?お腹空いた。


ハンガーの設置してある壁の向かいの壁には少し大き目な冷蔵庫がある。


………………、とりあえずなんか食べよ。


冷蔵庫を開けると中には良く見慣れた、長期間保存が出来るカロリーバーがあった。もそもそしてて苦手なんだよな、これ。


仕方なくカロリーバーを食べる。やっぱりもそもそしてる。これ、元は虫なんだよなー。


お父さんに聞いた話だと、ずいぶん前に世界の大半の有機生命体は死に絶えたそうだ。結局原因は聞かなかったなぁ。で、そんな中でも虫と言う種類の生き物は多く生き残ったらしい。繁殖力が高く、高タンパク。食料にはうってつけだけど、見た目が……ねぇ?

で、その貴重な食料を効率的に集めるために小さなアライフを何体か作り、集めるさせて加工させる。たくさんの虫を食べやすく、何より見た目がソフトな感じに仕上げた物がカロリーバーって訳。加工する過程は見たくないなぁ。まずは虫集めのアライフを作らなきゃ。


もそもそもそ……。あれ?なんかいつもと違う味がするな?


さらにしばらくもそもそ。すると気がついた。


「あ、これはお母さんが作ってた、野菜とかハーブの味が混ざってるんだ」


思わず口に出た。もちろん涙もまた出てきたな。


とりあえずだ、見る限り実活動時間で1週間ぐらいは餓死しない程度には食料はある。


次はゲノムやSAの確認をするか。

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