恋愛ゲームの裏ボスに転生したから裏ボス超えて『最強』目指す

ニア・アルミナート

一般人、転生す

 俺は少し記憶力に自信があるだけのただの一般人。


 ……だったはずだ。昨日までは。


 起きたらなぜか豪華な部屋の豪華なベットの上に居た。しかも、自分の手を見てみると、やたら小さい。小学生にすら及ばない程度の大きさしかないものと思われる。


 まぁ何が言いたいかというと、俺は小学生にすら満たない幼児に転生したってことだ。


 俺自慢の記憶力をもってしても、自分の名前が思い出せない。どうして死んだのか、どうして転生したのかも。まぁ何らかの制限がかかってると考えるのが妥当かな。


 今世についての事も何もしらない。まったくもって情報がない。


 とりあえず情報を得るためにベットから降り、部屋を見てまわる。


 4、5歳程度の少年の寝室にしてはあまりに広いな。そして、現代機器のようなものは何一つ存在しない。というか、物がかなり古めかしい。


 ありきたりではあるが、中世ヨーロッパ程度の文化力の異世界に転生したと考えるのが妥当だろうか。


 であれば俺が転生したのは貴族か?


 部屋を見ていると、少し大きめの鏡を見つけたので、それで自身の姿を確認してみる事にした。


「この目……」


 大鏡に映ったのは幼いながらも優れた容姿を持つ、黒髪で、金と黒のオッドアイの少年だった。


 この容姿の特徴には覚えがある。


 俺が前世でそこそこ楽しんでいた恋愛ゲーム「じぇねしす☆くらいしす」の裏ボス、グラン・ランバートだ。


 ぽっと出ながら、魔王すら超える戦闘力で多くのプレイヤーを苦しめ、そしてその容姿で多くのプレイヤーを魅了したかなり魅力的なキャラだ。


 このグラン・ランバートが裏ボスとして出現する条件は隠しヒロインと結ばれること。隠しヒロインの攻略法が見つかるのにそこそこ時間がかかったことから、このキャラが見つかるまでもかなりの時間がかかったはずだ。


 当時すごく話題になったからよく覚えてる。


 そんなグラン・ランバートに俺が転生したってことか?


「グラン様、お部屋をお掃除に入ってもよろしいでしょうか?」


「問題ないよ」


「ありがとうございます」


 俺がそう返事をすると、メイド服を着た女性が部屋の中に入ってきて掃除を始めた。俺の予想、中世ヨーロッパ風の異世界の貴族に転生は間違ってなさそうだな。


 そして、俺がグラン・ランバートに転生したということも。


 ……俺はメイドが掃除するところを眺めながら、ベットに腰を置いて考える。


 これからどうするべきか。先ほど物色している際に感触とかを確かめた結果、夢ではないのは間違いない。これから先の人生を考えなければいけないだろう。


 この体、グラン・ランバートの体はかなり才気にあふれた体だったはず。裏ボス戦の際に二段階進化するほどだし、その才は相当なものだろう。ラスボスである魔王すら超えるレベルだったしな。


 せっかく転生したんだし、俺は強くなりたい。目指すは、最強。裏ボスとしての俺は主人公に負けるようなストーリーではあったけど。今度の俺は主人公にも絶対に負けないレベルの強さを手に入れたい。


 それこそ、作中で名前だけ公開され、結局1人を覗いて登場はしなかった『五帝』に並ぶほどまで。


 そうと決まれば強くなるための努力を始めよう……。と言いたいところだが、まずは状況の把握が先だな。グラン・ランバートに関する情報はゲームの中でもほとんど出てなかったし、わからないことだらけだ。このメイドさんにいろいろ聞いてみるかなぁ。


「ねぇメイドさん?」


「はい! なんでしょうか!」


 俺がメイドさんに声をかけるとメイドさんがすごい勢いで掃除をやめて俺の方を向いて姿勢を正す。


 そんな焦らなくてもいいのになぁ。この世界の貴族の権力ってのは相当に強そうだ。まぁそれは「じぇねしす☆くらいしす」からもわかることではあったけどな。


「ちょっと勉強したくてさ。図書室の場所とか知らない?」


「図書室ですか? 知ってはいますが……」


 やっぱり予想の通り、この家? には図書室があるようだ。そこでいろいろこの世界の事について学ぶとしようか。「じぇねしす☆くらいしす」で出てきた設定はほぼ覚えてるとは言え、「じぇねしす☆くらいしす」はリンジェル王国という王国と魔王領以外が舞台になってないからな。学びは今後必ず必要になる。


 それ以外でも魔力の扱い方等課題は様々だ。魔力が使えなければこの体の最も大きな才能が活かせないからな。


「じゃあちょっと連れてってくれない?」


「え……か、かしこまりました!」


 なんかこのメイド俺にビビってない? 転生前の俺なんかやったんか? まぁいいか。とりあえずメイドの後について部屋を出る。


 この家は相当に広いのか、少し時間がかかったが、そこそこ大きな図書室に到着した。これだけあれば俺の欲しい情報は大分手に入りそうだな。帰り道も覚えたし、メイドさんには部屋の掃除続けてもらうか。


「ご苦労さま。掃除に戻っていいよ」


「い、いえ、もし本の倒壊等が起きたら危険ですので……」


「あ、そう」


 俺の安否の為にここに残るらしい。別に大丈夫……でもないか。俺今幼児だもんね。監視の目があるのは少し面倒だけど、やることは変わんないな。


 よし、このグラン・ランバートのアイデンティティである『空間魔法』、覚えちまうぞ。


◆◆◆


 昔一度事情があって非公開にした作品の再掲載となります。

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