サラブレッド・キングダム ダークナイト

木村さねちか

第1話 岡田弘明

 岡田弘明は、原グループ総帥原春子と岡田泰明の間に産まれた。泰明は婿養子であり、原家の経営するデパートの金を使い込み、春子と離縁。春子は泰明に顔が似ていたという理由で親権を泰明に押し付け、弘明は故郷から遠い関東の住宅街で育った。

泰明は原家から送られてくる弘明の養育費をギャンブル、主に競馬につぎ込み、弘明は育児放棄され、孤独に育ち、そして、競馬を憎んだ。父親よりも。


 弘明が中学二年生の時、修学旅行で北海道に行くことになった。松平ノーザンファームが旅行先に選ばれており、弘明は生まれて初めて馬に乗った。親友の神野五郎も馬に乗り、二人は遊びのつもりで併せ馬をした。神野は見様見真似で馬の手綱をしごくと、その馬は現役時代を思い出したのか、暴れて暴走しだした。

「たす……けて!……岡ちゃん!」

 弘明は首に巻いていたマフラーを鞭に見立て、自分の馬を全力で走らせて神野の馬と並走すると、神野の馬の手綱を片手に、怪力でむりやり引き倒した。

「大丈夫か? 五郎!」

 暴れ馬は放馬していなくなり、ゴローは弘明に助け起こされた。

「こわかったぁ」

 これが五郎、のちに天才神野と呼ばれる男と、馬上の鬼神、岡田弘明の初めての乗馬体験である。


 この話を聞いた松平グループ総帥、松平光輝は、二人をスカウトし、二人は騎手を目指すようになった。斎藤一馬厩舎預かりの騎手見習いになった弘明は、3年間競馬を学び、ゴローは当時リーディングトップの野山厩舎で競馬を覚えた。


 三年f後、斎藤厩舎には五郎と弘明のクラスメート、小河原が厩務員として入り、三人三様の競馬人生が幕をあける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る