あれファウルだろ

 ここは派手に時間を飛ばしてみよう。

 何やかんやあって、俺達は地区大会を突破した。

 本当に何やかんやあったが、そこは皆さんの想像にお任せする。

 水瀬は一年生を積極的に起用したので、皆一回は試合に出たことになった。

 緊張でミスもしていたが、それは俺達がカバーして、負けることなく神奈川県大会に進んだ。

 神奈川県大会に今回、横浜来栖は出ない。

 全国2位なので、全国大会にシードで行けるそうだ。

 県大会初戦は相模原市代表・七宮中学に決まった。

「七宮中学はラフプレーが多いことが特徴よ。相手の挑発に乗って、こっちがイエロー、酷い時はレッドカードをもらう時もあるわ」

「そんな学校と当たるのか、何か怖いな」

「たとえ挑発を受けたとしても、気にしないこと! 特に南雲!」

「俺かよ!」

「あんたが一番キレやすいのよ」


 ミーティングが終わると、俺達DFは連携を高める練習をした。

 霧谷をリーダーとして、ジグザグと同じように動く練習だ。

 仕上げに練習試合をすることになった。

 今回は霧谷が相手チームにいるので、俺がDF陣に指示を出さねばならない。

 前の時のようにはいかない。

 俺は俺なりに指示を出し、水瀬にも「やるじゃない」と褒められた。





 試合の日。

 スタジアムに向かうバスも地味―ズは隣同士だ。

「ラフプレーか、どんなのが来るんだろうな」

「ちょっと怖いぜ」


 深呼吸をしてピッチに入る。

 神奈川県大会第一戦。

 地区大会とは、明らかにレベルが違ってくる。

 少し緊張するが、平常心平常心と、心の中で唱える。


 江の島東中学 VS  七宮中学 キックオフ


 前半12分。

 天崎が睦月に高いパスを上げた。

 睦月は頭で合わせようとするが、相手DFが睦月のユニフォームを引っ張ってジャンプを妨害する。睦月はバランスを崩して、ボールは相手チームに渡る。

「あれファウルだろ」

 笛を吹かない審判に寿はボソッと抗議する。


 前半34分。

相手FWがキーパーの坂田と一対一になる。

 相手FWは坂田にぶつかると、倒れた。

「え……?」

「痛って~~~」

 坂田も俺も驚いていた。

 そんなに強くぶつかったか?

「ピピー」

 審判の笛が鳴り、坂田にイエローカードが出される。

「はあっ⁉」

「え……」

 PKをすることになった。

 坂田はイエローカードに動揺したのか、冷静にボールの行方を追うことが出来なかった。

 PKを決められ1点先取される。


 ハーフタイム。

「皆、ごめん……」

 坂田が、しょんぼりした様子で皆に謝る。

「お前は悪くねえって。それよりも相手と審判だ」

 坂田のモンペである寿がキレている。

「審判、七宮中と癒着してんじゃねえの?」

「そんなことある訳ないじゃない。私達は私達のプレイを精一杯やるだけよ。審判への不満とか口にしちゃダメ」

 納得できてない者が多かったが、後半に向けてのミーティングを行う。

「相手が近付いてきたら要注意ね。なるべく距離を取って、パスで繋ぐこと」

「分かった」


 後半16分。

 寿がドリブルでゴール前へと切り込んでいく。

 相手DFがシュートコースに入り、シュートを妨害しようと割り込んでくる。

 寿は相手DFがぶつかりに来る前に、フリーの南雲にパスする。

「ナイスだ! 寿!」

 南雲はシュートを放ち、ゴールが決まる。

「よっしゃああああ」

 今までのフラストレーションが貯まっていたのか、喜びでユニフォームを脱いで回す。

「ピピー」

 イエローカードだ。

「こら~、南雲~」

 水瀬がベンチから怒っている。

 サッカーでは試合中にユニフォームを脱ぐことはイエローなのだ。

 南雲はバツが悪そうにユニフォームを着直した。


 後半32分。

 ボールは天崎の元にあった。

 睦月にはマークが付いていたが、不可思議な動きを繰り返し、相手DFをかく乱する。

 天崎はパスコースを見つけ、睦月にパス。

 睦月はDFを一人抜き、ゴールへ一直線。

 シュートはゴールポストに吸い込まれていった。


 試合終了のホイッスルが鳴った。

 2対1で俺達の勝ちだ。



 帰り道。

「勝ったな」

「ラーメン行くか」

「いいな」

「俺も混ぜてくれよ」

 地味ーズに南雲が混ざってくる。

「俺、ゴール決めたから、お前らの奢りな」

「え~」

 仕方ないから御手洗と半々、南雲の分も払ってやった。






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