江の島東  VS  欅学園 

文化祭の次の日はサッカーの試合です。中々のハードスケジュールですね。

市内のサッカースタジアムに到着しました。

「文化祭の次の日も部活動の引率とか辛ぁ……。もう教師マジブラック」

 顧問の日吉は明らかに不機嫌です。

「昨日、先生、クラスの方でのほほんと昼寝してましたよね?」

 日吉は田所のクラスの担任です。

「戦士の休息ってやつだよ」

「全く、これだから日吉は……。今日もどうせ顧問らしいアドバイスの一つもないんだろ?」

「ないね!」

「そこ自信たっぷりに言うとこじゃないぞ」

 寿は日吉に呆れながらも俺達を鼓舞し、ピッチに向かいました。


 今日の対戦相手の欅学園はさすが私立ともあって応援団も豪華でした。チアガールとか羨ましいです。初戦の白銀学園にも負けず劣らずの迫力ですが、うちの応援団だって、ここで尻込みするような奴らではありません。水瀬が鍛えた精鋭達です。

 俺達が入場すると江の島東中応援団が応援歌を演奏します。

「睦月~、サッカー部の皆さん、頑張って~!」

 応援席から美月ちゃんが手を振っているのが分かります。

 その声援に励まされて、整列し、ポジションに付きました。


 江の島東  VS  欅学園    キックオフ


 

 FWでキャプテンの野崎には守備力に優れた霧谷がマンマークで付きます。

 欅学園は野崎にパスを出そうとしますが、パスコースには霧谷、笹森が入り、野崎へは中々ボールは渡りません。

 俺は中盤でボールを追い、FWに繋ぐ役割があります。

 俺と水瀬は今回、攻撃にも参加します。FW三人と合わせて、五人でゴールを狙う形です。

 前半12分。

 俺にボールが回ってきたのでドリブルで駆け、FWの槙にパス。

 少し高く上がったボールを槙はヘディングで合わせますが、キーパーの手に弾かれ、ノーゴール。

「惜しかった!」

「切り替えていこ!」

「速攻!」

 相手キーパーがロングパス、相手MFにボールが渡ります。

 欅学園は何とかして野崎に繋ごうとしますが、霧谷がいます。

 野崎はボールを受けたい方と逆に動いたり、緩急を付けて動いたりして、霧谷と小さな駆け引きを続けています。

 前半36分。

 ついに野崎が駆け引きに勝ち、霧谷の裏を抜け、ボールを手にしました。

 そうなった野崎はもう止められず、キーパー坂田と1on1。

 野崎はシュートセンスも抜群で、鋭いシュートがゴールポストを揺らしました。

「よっしゃあああああ」

 野崎の雄叫びが響きます。

「坂田、どんまい!」

「次、次!」


 休憩を挟んで後半10分。

 敵DFが睦月にマンマークしており、中々パスが出せません。

 俺はコーナー付近まで行きましたが、上手くシュートコースが狙えませんでした。

「おい、こっち出せ!」

 南雲の足先にパス。

 そして流れるようにシュート!

「よおっし‼」

南雲がゴールを決め、同点になりました。


 後半38分。

 FW陣のマークがキツくなり、中々パスが出せません。

 やるしかない……。

 俺はボールを持つと、キーパーの位置を素早く確認、ゴールまで30メートルほど。

「行けーーーーっ」

 俺のロングシュートがゴールの隅に突き刺さります!


 その後は、2点の差を守り切って、2対1で俺達、江の島東の勝ちです。


 帰り道。

 今日も地味―ズで一緒に帰ります。

「やったじゃん、御手洗」

 コンビニで笹森がアイスを奢ってくれました。

「おう。久しぶりにゴール決めて気持ち良かった」

「本当、勝てて良かったよな」

「ああ、万年一回戦負けの俺達がベスト4だぜ? すごくね?」

「すごいすごい」


 この調子で、ずっと勝ち続けたいと、俺は思いました。


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