思いがけず馬鹿にしたけれど

あんちゅー

後悔の後には

あなたとまた会いたいと思った私は、あなたといつも一緒に過ごした場所に立っていた。


そこは懐かしい学生時代を送ったアパートで。


ベランダでタバコを吸うあなたの横顔が、風に吹かれてなびく髪が、とても綺麗だった。


凄く昔の話。


けれど、不思議とそこに懐かしさは感じなくて、いつまでもあなたが居るような気さえした。


でも、それは気の所為なんだろうな。


あなたは居ない。


いつも聞こえた笑い声や


心安らいだ温もりに


私を突き動かしたあなたの泣き顔も


私にはひとつも感じやしないのだから。


あなたに会いたい思いだけが増した。


また失敗だったみたいだ。



あなたともう一度話したいと思った私は、ひたすらあなたとの思い出の場所を巡った。


それはいくつも訪れた旅先の1ページ。


切り取られたあの1枚の場所に、記憶を辿って着いた先。


どんな些細なことも覚えていると思っていた。


けれど、経過した時の長さは私の記憶と比べて色んな所が変わっていた。


どこに足を運んでも、少しばかり違ったその場所達が私には別のもののように感じられた。


でもそうか。


私の隣にあなたがいない。


たったそれだけで違って見えるのかもしれないと分かった時に、


急に涙が溢れてきた。



目を閉じて思い返す。


あなたの為だと思ってしたことが、今になって後悔になった。


私にはとても強い決心だった。


あなたは最後に驚いた顔をしていたね。


もっと喜んでくれると思っていたんだ。


私はね、あなたが誰より大切だったから。



あなたに会いたい想いで私は、朝の街をさまよった。


こんな事をしても会えないことは分かっているけれど。


私にはもう何も残っていなかった。


楽になりたいから、あなたを探した。


思い残すことなく、あなたを探した。


こんな不幸がいつまで続くのだろう。


いつしか私は目的すらも忘れてしまった。



ある時知らない女が私の肩を叩いた。


私は弱々しくふらついてから、振り向いた。


その女は私の耳元で、消えてしまいそうな声で言ったんだ。


ずっとあなたの後ろにいるわよ。


そう言われて私は振り返る。


あぁ、やっと会えた。


貴女がそこにいてくれた。


私にはもう怖いものが無くなった。


足取りは軽く、飛び上がってしまいそうな体で飛び降りた。


あなたを突き落としたあの場所で、思い残すことなく飛び降りた。


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思いがけず馬鹿にしたけれど あんちゅー @hisack

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