第二話 別れて出会ってそして始まる―2


 その後、僕は普通に家に帰されたが、どうやらミズの方は何かをやらかしたらしく、村長の家に連れてかれていった。


 明けて翌日、僕は農作業も鍛錬も何もしたくないので、いつも通り風車が見える丘の木の下でのんびり過ごしていた。

 そこに、いつも通りミズがやって来た。昨日と同じく笑顔だが、少し元気がないように見える。


「どうしたの?」


 僕は聞いた。彼女は、少しだけ何かを言うのをためらっているみたいだった。彼女は僕と目を合わせようとしない。


「なんで何も言わないの?体調悪い?」


「………」


「しゃべれなくなったの?」


「そういうわけじゃないんだけど…」


 彼女はやっと口を開いた。その瞬間、彼女と目が合った。彼女の目は深い海の色をしていた。


「…うん、私達にはやっぱり、そういうの似合わないよね。」


「…え?何が?」


 彼女の瞳に明るさが戻ってきた。


「ううん。なんでもない。」


「え?」


「何でもないよ。」


 意味が分からなかった。彼女以外には誰も分からないだろう。自分の中で思考を完結されると困るのはこっちなのに。


「じゃあ、分かった。そのことは言わなくていいよ。かわりに一つ教えてほしいんだけど…」


「…何?」


「どうして昨日追われてたの?」


「ユウトが言ってた”そのこと”が理由だから、まだ言えないよ。」


 彼女は含みを持たせて言った。そして、彼女は振り返り、村へと歩き出した。

 僕は、丘の上の大樹の下に一人、ポツンと取り残された。それはいつも通りなのだけど、なんだかとても寂しさがこみあげてきた。

 これから本当に一人になってしまうのだと、そんな気がした。

 僕のそんな予想は的中し、数日後に彼女はこの村から姿を消した。



 これまで当たり前だった存在がいなくなると、とてつもない寂しさがこみあげてくる。二年前に家で飼っていた魔獣が死んでしまった時も、強烈な寂しさというものが僕に襲い掛かってきた。ちなみに、魔獣というのはイノシシや鹿などの獣とは違い、腕や足、臓器の全てが魔術という術理によって構成されている生き物のことを言う。魔術に関しては僕もよく知らない。大気中に存在する魔素という物質に何かしらの方向性を持たせて力―――魔力にし、それを利用して何かしらの変化を起こす行為が魔法、魔素という物質をそのまま利用し、何かしらの変化を起こすのが魔術らしい。正直違いが分からないが、僕は生涯において魔法や魔術を使う事が無いと思うので、あまり気にしなくてもいい。

 さて、僕は彼女のことを妹のようだと思っていたので、かつて魔獣を亡くした時とは比にならないほど悲嘆に暮れていた。

何をしていたのかといえば、自分の部屋でふさぎ込んでしまっていた。心配した両親が時折部屋の扉をノックするが、僕はそれを無視し続けた。

 部屋に一つしかない窓から薄いカーテン越しに差す光のみに、僕の部屋は照らされていた。

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