第12話 絡んだことのない相手のボケをうまく処理できるかでツッコミとしての器が図れるよね
薄暗く、恐怖を感じるほどに静かで、生命の気配などこれっぽっちもしない。
「はぁ?それで失敗したってか?実行者は誰、俺が殺す」
そんなダンジョンの奥底、一瞬前まで誰もいなかったはずのその場所で、虚空に向けて話しかける男が存在していた。
『18番ですが……
———そして、その言葉に対して返答をする虚空からの声も。
「御託は聞いてねぇのよ、結果を出せっつってんの、わかる?すでにクライアントを待たせてる状況なんだからさ。本体で95億、おまけで5億。もう20は前金でもらってるわけよ?」
『し、しかし、18番はウチで最も優れた……』
虚空に向けて話しかける男の口調は強い苛立ちを帯びており、それを受けることしかできない虚空からの声の方は、相当弱い立場であることが伺える。
「知らねぇよ。そいつ1人いなくてもどうにでもなんだろ?それともあれか、お前んとこはそいつが他の全員を合わせるより仕事できたってのか?だとしたらとんだ無能だな、てめぇらはよ」
『そ、そういうわけでは……』
「じゃ、やれるよな?つぅかやれ。失敗したら殺すから」
虚空から聞こえる焦ったような声を無視し、男が軽く手を叩くとダンジョンの中は再度静寂に包まれるのだった。
〈《》〉
「さて、このように、ダンジョンの中で怪しい人間を発見したとします。このような場合、どんな行動をとるべきかわかりますか?」
男2人がダンジョンの中で密談する動画を最後まで見せ、俺はまるで教師のように目の前のセーラー服を着た3組にそう問いかける。
「おう!ボコボコにしてダンジョンの入り口まで引きずってけばいいんじゃねえか!?」
そう答えたのは、穗村エン……燃えるような赤髪をポニーテールにし、男勝りな性格をしている俺の同期の1人……というか、残りの2人も俺の同期だが。
「威勢が良くて大変結構、それができれば理想ですが、一応ダンジョンに潜り始めたばかりの新人を対象とした教育用動画だということを忘れないでください。では、直接相手を倒せないと仮定して……マリエルさん、お願いします」
「フフフ……2人とも洗脳して……私の下僕に……!!」
「相手がただ怪しいだけの普通の人だった時に困るのでやらないでくださいね~!!??」
そんな場合によっては法律に触れる爆弾発言をしやがったのがマリエル・ディアボリ……モンスターを怪しい魔法で操って戦う姿がニッチな(フォロワー数55万)人気を持つ、黒髪黒目でダークな雰囲気を持つ少女である。
一回いたずらで洗脳されたときはエロトラップダンジョン用の洗脳対策で助かったが、それ以来ちょっと苦手意識があったりする。ちょっと、ちょっとな?今はもう対策のレベルもだいぶ上がったし、余裕で弾けるはずだ……。
「じゃあ最後、メグメグさんお願いします」
そうして最後に話を振るのは、無口無表情なピンク髪&碧眼のロリっ子である
いや、そもそもちょっと前まで俺抜きの4人だけだと思われてたし、しょうがないんだけどさ?
「ん。玉砕覚悟で、突撃」
ちなみに、その見た目とは反対にその身長+25cmくらいあるでっかい大剣を軽々と振り回して周りの敵を寄せ付けないバーサーカーでもある。飛んでる相手に届かない届かないしている時くらいしか幼女らしい姿は見せないのに何で不思議ちゃんみたいなツラしてるんでしょうねぇ……。
「ん~~~~~その身を顧みない勇猛果敢さには敬意を表しますがね、0点です。……予備枠、みずな」
ここにはボケしかいなかったため、予備で話を振ったのは教育実習生みたいな服装のみずな。みずな。以上説明終わり。
「なんか私だけちょっと雑じゃない……?……えっと、」
「はいせ~か~い。はくしゅ~ぱちぱち~」
「まだ何も言ってないよ!!??」
「というわけで正解は、一度入り口に戻って、ダンジョンの出入場を管理している人に伝える、でした~!警戒しすぎだと思うかもしれませんが、過去にこれで数百人単位の死傷者が出た事件もありますので、しっかりと徹底するようにお願いします!」
「やっぱり私だけ雑だよね!?ねぇ!!??」
すまんなみずな。俺は8方向から飛んでくる触手を切り飛ばしながら雑談は出来ても、4人から飛んでくるボケに突っ込みながら番組の進行はさすがにきついんだ。俺の代わりに犠牲になってくれ。じゃあ次の解説は……
「さて、続いては魔力の解説をしていきます。こちらはダンジョンについてのような何もわからないという説明ではなく、ある程度のことは判明しているのでご安心ください」
ん?カンペ?……巻きでお願いします……あ~、ここまでで大分ツッコミ入れてたから……
「私たちが日ごろから魔力と呼んでいるものは、目に見えません。一応触れることは出来ますが、空気よりも軽いため接触によってそこにあることを感じるのは難しいといえるでしょう。」
「実際あたしもよくわかってねぇしな!!それでも意外と何とかなるぜ!」
「魔力はダンジョンに潜るだけで少しずつ増えるので、感じられなくても強くなれますね。他にも、魔力は武器や防具にも変化をもたらします。耐久性が上がったり、切れ味が鋭くなったりですね。我々のような配信者の衣装も、こんなひらひらしてますけど、実は弱めの銃弾くらいならいくらばらまかれても無傷で済むくらいには頑丈になっています」
「武器は、自分の魔力で、作る。しっくり、くる」
すごい、さっきまでボケ倒してた同期三人組が俺にイイ感じのパスを……!!カンペは……OK!このままいけば大丈夫そうだな!
「武器を生み出す魔法は、ダンジョンに入ったならだれでも使える魔法と言われています。こちらは詳しくは分かっていませんが、出したり消したりが自由なうえに魔力での強化もしっかり乗るので、よほどのこだわりがないのであれば使うのがおすすめですね。職質もされませんし」
現行の銃刀法だと仕事で必要なら特に問題はないらしいのだが、職質はされるのだとか。大体の人が魔法でダンジョンにいるときだけ生み出しているからか携帯する人が少ないのもあるし、大丈夫だろうで見逃した結果昔死傷者が出たことがあるからというのもあるらしい。
「ほかにも慣れれば直接身体能力の強化倍率をいじったり、魔力から物質を生成したりと何でもできますね。例えばこんな感じで……」
そういいながら、はさみと小さな金属棒を作り、自分の髪の毛を一本切り落とす。
「倍率をハチャメチャに上げれば……こんな感じで、髪の毛一本で金属製の棒を切ることすらできてしまうんですね」
「その髪の毛……ほしいわ……!」
「魔力を回収するのであげられないですね~。……とりあえず、初心者の皆様は武器を出す、道具を作る、魔力での強化込みで、パンチで石を砕くあたりができるようになるくらいを目指すとよいんじゃないでしょうか?」
カンペカンペ……よし、何とか間に合ったか。ならあとは〆の挨拶を入れて終わりかな。
「それでは本日の動画はここまで!次回の動画では、ダンジョンの区分ってどうなってるの?ということについて解説していきます!ではまた、次回の動画でお会いしましょう!みずな、号令よろしく」
「きり~つ!きをつけ~!れ~い!!」
「「「ありがとうございました~」」」
カメラが止まったことを確認し、教師風ということでつけていた伊達眼鏡をはずす。ちなみに俺が教師役になった理由はフォロワーの数が一番多いかららしい。
バズったからこの立ち位置だったが、バズってなかったら撮影の間ずっと廊下で水バケツ持ちながら立たされていたんじゃないだろうか……いや、そもそも呼ばれないか。
「おつかれ。今度、コラボ、しよ?」
教室っぽいセットとして用意されていた教卓の上にうつぶせで寝そべり、腕と足を投げ出して脱力していたところをメグメグに話しかけられる。
「もうちょっとしたらマネージャー決まるので、それからでも……」
その言葉に返事をしようとした瞬間、爆音を鳴らしながらドアがスライドした。
「白雪くん!白雪くんは……いるね!緊急の依頼だ!期限があと4時間しかない、急いできてくれ!!」
急に入ってきて、急に俺を呼び出したのはぜぇはぁと息を切らしている社長、その様子だけで、緊急というのがどれだけの物か伺える。
「メグメグさん、申し訳ありませんがその話はマネージャーが決まったらそっちにお願いします。私も楽しみにしていますので、絶対連絡してくださいね!!」
「白雪くん!」
「分かってますよ!!」
ったく、もしこれでしょうもない理由だったら承知しないからな。その時はケガしない程度に一発顔面を殴ってやる。
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