第5話 昔ハマったゲームって案外色々覚えてるけど、改めてやると変なとこで変なものが見つかるよね

「エロトラップと嬌声溢れる優しいダンジョン……の入り口前からこんにちは!エロ触手の調理方法は焼くより刺身派の白雪です!今ちょっと頭だけ入れるんですけど……ご覧くださいこの一面のピンク!もはや実家のような安心感さえ感じちゃいますよね~」


・感じないが?

・エロトラップダンジョンで感じちゃう白雪ちゃん・・・?

・いつにもましてイキイキしとる


定番の挨拶プラス一言おまけから始まるいつもの配信が、せいぜい1週間程度しかたっていないのに随分と久しぶりに感じてしまう。それだけここ1週間が濃密だった、ということだろう。


「私の配信を始めてみるよ~、という方もいらっしゃると思いますのでね、今日はちょくちょく解説なども挟みつつ進行していきたいと思っております!場所はいつものところですね!未踏破なのでお宝もザクザク!」


・未踏破以前に白雪ちゃん以外がこのダンジョンにいるの見たことないけどね

・新規が多いからって今更猫かぶっても無駄だぞ

1000『触手さん頑張ってください』


「スパチャありがとうございます~でも送り先間違ってます~」


・触手は配信してないから・・・

・生まれて初めて八百長を行おうとしてる人間を見た

・俺はお宝だと思って油断してミミックに食べられる白雪ちゃん期待してます


「最初の方は飛ばし気味でとりあえず18層あたりから真面目にやっていきますね~。じゃあ突入!」


・突入!

・突入!

・突入!

・挿入!

・突入!


ダンジョンの中に入った瞬間、何度経験しても慣れない動きにくさが全身を包み込む。他では経験できないが、例えるなら浮力の存在しない水中、とでも言おうか。


「な~んか……ダンジョン入った瞬間の感覚ホントに嫌いなんですよね~めちゃくちゃ体動きにくくなりません?」


・わかる~なんかね

・白雪ちゃんってそういうのと無縁だと思ってた。その辺は俺たちと変わらんのやね


そんな状態も、数秒経てば元に戻る。そうしたらあとはモンスターを狩りトラップをすり抜けながら慣れた道を進むだけだ。


「知ってる人も多いと思うんですけど、エロトラップダンジョンって基本的に一本道で1階層ごともあんまり広くないんですよね、慣れればほんとに1分あれば一層進めますし」


・エロトラップで足止めする前提みたいな設計だよね

・○○階層ダンジョン攻略タイムアタック系だとレギュ分けられてるくらいやし・・・


「なんて言ってたらもう階段ですね、さっさと次行きますか」


・俺が知ってるETD配信じゃない・・・

・横すり抜けられたゴブリンがえ?は?って顔してるのじわじわ来る

・これぞ白雪ちゃん、ギミックガン無視で2年半は配信してるだけのことはある


「次の階層は……おっ、スライム水路ですね!これは当たりですよ!」


・スライム水路って防御不可破壊ほぼ不可のクソ厄介な奴では?

・TAやってる人がこれさえなければ10階層一桁分台も夢じゃないのにっていっつも切れてるイメージある


「スライム水路はこうやって……」


腰を落とし、右足を後ろに伸ばして階段のふちに掛ける。そのまま地面に手をつき、腰を高く上げて……


「走り抜ければ!スルー出来ます!」


・ニンジャ・・・?

・クラウチングスタートで見えるかなって思ったけどしっかりパンツ隠れてた・・・

・いつ見てもシュールで笑える


「ふぅ……水上走りならぬスライム上走りは水よりスライムの方が密度が高い分簡単ですのでね、見た目よりは全然簡単なんですよね。……三層は植物系触手のトンネルですね、燃やします」


・ひどい

・無慈悲すぎる


「酸素供給を魔法かガスマスクでしないと酸欠で気絶して新しい触手の餌食になりかねないので気を付けましょう。ちなみにこの灰を栄養にして新しい触手が早く成長するっていう話もあります」


・焼畑農業で触手も早く育つんか・・・

・はえー、生命の神秘やね・・・

・さらっとやべぇこと言ってんな


「解説すること意外とあって解説系チャンネルみたいになってるんですけども、とりあえずモンスターを狩ってる間くらいは……」


話の繋ぎを挟みつつ、植物トンネルの外側、俺の索敵範囲外にふと目をやると、そこには茶色い……


「宝箱!!!!!!数種類ランダムで何回も通ってるはずなのに今まで全く気付いてなかったわ……取れ高取れ高~」


・今日は4分で敬語崩れたか

・ミミックミミックミミックミミック

・あ、本性出てきた

・数種類とはいえ毎回構造変わるのかなりヤバいダンジョンでは・・・?


索敵範囲内に入ったが、ミミックのような反応はなし。いいものを引けばまさしく一攫千金の宝箱とはいえ、三階層で出てくるものなんてたかが知れてはいるだろうが……


「オープン!……これは触手パンツ……でもまぁ擬態型じゃ無くて寄生型だから、触手さえ取り除けばめちゃくちゃ頑丈で肌触りがいいパンツにはなるか……」


・自分を納得させる用の説明口調わらう

・宝箱から出てくるのもエロアイテムなのかよ

・ミミック・・・・・・


触手パンツかぁ……触手抜きのは俺も使ってるけどもう十分な枚数あるしなぁ……売却するか。


「とりあえずこれは売却するつもりで、売るなら触手付きの方が高く売れるんだよな……」


・すごいことを聞いた

・需要は確かになくはない・・・のか・・・?


「ちなみに触手付きの中古品は買った時より高く売れるらしいぞ」


・もっとすごいことを聞いた

・これは確実に需要アリ


……切り替えよう。


「ちょっとおまけもあったけど4層行くぞ!GOGOGO!」




〈《》〉




「ん?みずなとのコラボで最初につかった魔法?今日と同じくらいの力しか込めてないはずだけど……そうそう、今にして思えばたぶん普段エロトラップダンジョンで制限かけてるのがなかった分調子よかったんだろうな~とは……おっと階段、18層をクリアしたわけだが……本日4個目のた・か・ら・ば・こ!!!!」


今日はもう4つ目だが、本来1か月に1個見つかるかどうかというような宝箱が見つかったことで、視聴者も俺も直前までしてた話なんて忘れて大盛り上がりである。


・でも今のところ三つ全部触手服だったじゃん

・パンツ、靴、タイツときて何を引くのか。このままじゃ上何も着れるものないですよ

・このままだと露出幼女になっちゃうよ


もっと盛り上がれよ。


「帰りの服集めてるわけじゃないよ???……おらっ!オープン!」


出てきたのは……


「触手ワンピィィィィィィィィィス!!!!!」


・草

・これこのまま全部着る配信にしませんか?

・コンプリートおめでとうございます


「……はいっ、ということでね、本日私が19層以降を本番に据えた理由なんですけども~……」


配信者としての本文に立ち返り、階段を下りながら視聴者が飽きない程度に間を作りつつ……


・現実逃避し始めた

・19層・・・っていうといつものあれか

・触手服着用配信から逃げるな


「じゃーん!当チャンネル準レギュラー、喋れて犯せるかわいいモン娘ことサキュバスちゃんで~す!!!」


「あら?とってもかわいらしい侵入者さん……トロっトロに蕩かしてぇ、もっとかわいくあげる!」


階段を下りきると、妖しい目付きをした妖艶な美女がどこからともなく姿を現した。側頭部に着いたまっすぐ伸びる二つの角と、露出の激しい服装から見えるフリフリとした黒くて細長い尻尾からしかモンスターと判別できない程、その姿は人間に近い。眼福眼福。


・サキュバスチャンカワイイヤッター!

・お、今日のサキュバス過去12を争うレベルで可愛いぞ

・サキュバスが喋ってるの初めて見た・・・

・出た、毎年男性の被害者が絶えないサキュバスさんだ。


そう、このモンスターこそ男の夢ことサキュバスちゃんである。ボンキュッボンの体型(望めば全部ボンにも全部キュッにもできるらしい、モンスターってすごい)を持ち、人間を性的に弄ぶことに最も快楽を感じるやべー種族である。


「ごめんなサキュバスちゃん……きょうもお世話になります……というわけで、今回はサキュバスの捕獲について解説していこうと思います」


「……?何を言ってるの?あなたは私に遊ばれる側よ?それに捕獲?あなたは捕まる側……よっ!!」


「まず、サキュバスと遠距離戦を行うのはやめましょう。当たったら即行動不能になる強力な麻痺魔法や失神魔法を大量に飛ばしてきます」


・俺の知ってるサキュバスじゃない

・サキュバスってのはこう・・・近接しかできない分誘惑で油断させて近づかせてからっていうモンスターでは?

・遠距離攻撃ばらまけるタイプのサキュバスってだいぶヤバい奴じゃない?


「魔法を搔い潜って近づいたら近接戦が始まります、この場合サキュバスは行動阻害系の魔法を両腕に纏うので、こちらも食らわないようにしましょう」


・これはたまに見る

・魔法耐性ガチガチに固めたタンク職が10発耐えられないやべー魔法


「ついでに魔法吸収と武器破壊魔法を全身に纏っているので、属性付与等の強化ではなく純粋な身体能力強化で戦いましょう」


・は?

・イカれてる

・そのモンスター一回押し倒されたら身長2mのゴリマッチョが抵抗してもびくともしないモンスターなんですけど

・白雪ちゃんって魔法職じゃないん?ずっと魔法しか使ってなかったけど

5,000『物理攻撃だけってどうやって捕獲するん?』


「スパチャありがとうございます。サキュバスの捕獲方法ですが……角を折るのと尻尾を引きちぎるか切り落とすことですね。このサキュバスちゃんは武器破壊があるので引きちぎる方しかできませんが、基本的には角片方で大体30%、尻尾で大体残りの40%程度魔法の使用能力が落ちます」


・ひどい

・怖いこと言ってる

・サキュバスちゃんちょっと怯えてて草


「変なこと言ってないでっ!はやくっ!つかまりなさいよっ!!」


・サキュバスちゃんの攻撃全然当たらんけど白雪ちゃんも攻撃せんね

・うおおお負けろ負けろ負けろ


「ああもうっ!なんでこんなに……!!………………え????」


回避に専念し、サキュバスの気が緩んだ一瞬、その隙をついてサキュバスの右角をへし折った。そうして隙が隙を生み、左側の角もへし折る。


「ま、まだ終わって……きゃあっ!」


行動阻害の出力が落ちた拳を体の魔力で相殺し受け止め、その勢いのままにうつぶせになるように転ばせる。


・格闘系幼女・・・?

・ぅゎょぅι゛ょっょぃ

・今どう見ても気絶魔法当たってたけど無効化してるやん


サキュバスの尻尾を根元から引きちぎると、サキュバスはピクピクと痙攣して気絶した。


「これで、終わり……っと。念のため補足ですが、サキュバスには痛覚がないため角を折ったり尻尾を引きちぎった時に感じるのは快楽です、遠慮せずにできますね」


・えぇ・・・

・あの痙攣ってそういう・・・?

・飼いサキュバスだけどこれほんとね、角も尻尾も2週間くらいしたら生えるんだけど、生え変わるたびにやってもらってるせいで一生治らないみたいに見えるだけだから


「それでこのサキュバスを捕獲した理由なんですけど、とりあえず20層に言ったらわかると思うので1回進みますね」


・仲間になるんか?

・あ・・・あ・・・

・今のうちに打ち込んで準備しとくか


引きちぎった尻尾を使い、もはや慣れた手つきで手足を縛って担ぎ上げると、サキュバスを倒したことで開いた扉から見える階段へと歩みを進める。


「と、いうわけで、その理由が…………こちら!このでっかいドアですね!なんとこのドア、ドアノブがありません!うわー!たいへん!いったいどうすればいいんだー!」


・棒読みで草


「さてさて、これを開けるギミックを探すと、ドアの前に鎮座してる木馬がありますね!そしてこれについてるディル……鍵が!あのドアを開ける方法となっています!」


・え、開扉用のあれって先に進むなら実質強制じゃないの?

・あっ(察し)


「鍵ということは鍵穴が必要なわけなんですけどもね、どこにあるかといえば……はい、人類の半分は鍵穴が開いていますね!このギミックは鍵を挿すと3時間は拘束されて動けないクソ仕様なんですが……」


・あっ

・ぅゎょぅι゛ょひどい

・ここまでされたらもう・・・ネ・・・


「わー!びっくり!ここにちょうどカギ穴の開いたサキュバスちゃんが!さっそく鍵を開けていきましょう!」


・はえーーー初めて知ったよ・・・

・エロトラップダンジョン配信でよく見るこれ系統の前のサキュバスってボス戦じゃなくてギミックだったのね・・・


「あれ……?私……どうなって……?」


「サキュバスさん!本日もお世話になります!あざーーっす!!!」


扉の開閉ギミックが作動した音でサキュバスちゃんが目を覚ました。さらばサキュバスちゃん、君の犠牲は忘れない。


「あれ……これ、どうなって……い、いやっ!外して!離して!!やだ!やだぁ!!!」


・サキュバスチャンカワイソウヤッター!

・サキュバスチャンカワイソウヤッター!

・サキュバスチャンカワイソウヤッター!

・俺・・・見てて心が痛いよ・・・

・サキュバスチャンカワイソウヤッター!

・サキュバスチャンカワイソウヤッター!

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