第6話 正義を名乗る新聞部員少女02
その夜。
「
例の如く俺の部屋に来た、
「すごく嬉しいんだよ、でもね」
「けどな、それで高校で過ごしにくくなったら、本末転倒だろ」
「んー、そうなんだけどね」
人が傷つく、人を傷つけることを、極端に嫌う。
おまけに「人の善性」を信じ過ぎている。
だからこそ、こんな俺との幼馴染を維持しようとしてくれるのだろう。
が、今回ばかりは話が違う。
学校の環境が悪くなれば、
「あやめには目標があるだろう。その障害になってもいいのか」
「……久しぶりに名前で呼んでくれた。なんか感動」
「そこじゃない」
今の名前呼びは、俺のミスだ。
「なあ
最優等生。
品行方正、文武両道にして明るく活発で、他の生徒の模範となる生徒に贈られる称号とは、
この最優等生に選ばれることを、
幼馴染協定で
「……お母さんとの、約束だからね」
若い日の
が、結果的になれなかった。
今は離婚して、
けれど
「私とお母さんの、たったひとつの絆だからね」
ああ、
やはり、幼馴染の俺がなんとかするべきだ。
この独りよがりの決意が間違いだと知るのは、もう少し後になる。
週明けの朝。
俺は初めて他人の下駄箱に手紙を入れる。
そして放課後、手紙で呼び出した相手は指定した空き教室に現れた。
「あんたから呼び出すなんて、どういうこと?」
「この前の話の続きをしようと思ってな。不完全燃焼だろ、赤堀も」
メガネ女子、赤堀亜衣。
元新聞部員にて、例の学校新聞を書いた人物だ。
「まあ、そうね。なんたってあんたは、あたしの報道を邪魔したんだから」
赤堀にとっては、そうなのだろうな。でも。
「他人のゴシップを書いて公表するのが報道、か。ずいぶんと悪趣味なこった」
「あんたに迷惑はかけてないでしょ!」
「俺以外の誰かの迷惑になっている、という自覚はあるんだな」
赤堀の口が止まる。
さて、元々が破綻した報道活動だ。
ここからどう正当性を作るのか、見ものだ。
「
「だが、
もっと言えば、知る権利ってのは国に対して、だ。公民の授業でも習っただろ。
「そんなの知らないわ。あたしはただ、みんなに真実を伝えただけ」
ボロが出てきたな。
では角度を変えるとしよう。
「新聞部、去年廃部したんだってな」
「は? だからなに」
「あの掲示板に新聞を貼る権利は、新聞部にある。田端先生に確認したか?」
「だから新聞部のあたしが」
「元、だろ。今は新聞部は存在しない」
赤堀はゆっくりと俯いて、勢いよく顔を上げた。
「が、学校の掲示板なの! 誰が何を貼ってもいいじゃない!」
「……おかしな発言って、わかってる?」
冷静に返すと、赤堀は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「うるさい! あたしは、新聞部を復活させるの! そのためには武器になる強い記事が必要なの!」
「つまり、
「そうよ、悪い?」
「悪い。百%。全面的に。圧倒的に」
けれど、赤堀はわかっているのだろうか。
そんなゴシップ記事で注目を集めたところで、新聞部は復活できない。
むしろ特定の生徒の私生活を晒す行為を非と判断して、掲示板を使用禁止にされる危険が大きい。
その原因が元新聞部の赤堀とされれば、赤堀による新聞部復活は事実上不可能になる。
「とにかくあたしは、これからもスクープを公表し続ける。文句は言わせない」
「……わかった。なら、俺が新聞を作って掲示板に貼っても、文句はないよな?」
「──は?」
呆気に取られた赤堀に俺は、最後の武器を突きつけることを決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます