親子だからこそ
「ただいま!」
「あら、真理突然どうしたの連絡も無しに」
「旦那とけんかしちゃってさ、しばらく泊めて、おじゃましま~す。あ、あんたたちは下に居なさい」孫達に声をかけると真理は荷物を持って二階へあがって行った。
私は
数日経って私は違和感を感じるようになった。真理は毎日着飾って出かけていく。友達に会うにはちょっと派手すぎやしないか。それと孫の、
食事の時も「食べていいの?」と聞く。私が「もちろん!たくさん食べてね!」と言うと安心したように食べだすのだ。
10日ほど過ぎて主人が「雄太君に会ってくる」といって朝早く出かけて行った。
(雄太は真理の夫で、孫の父親)
「おはよう。おじいちゃんは?」
「用事があるからってお出かけしたのよ。そうだ、今日3人でお買い物行かない。お昼も外で食べようよ。何食べたい?」
「ハンバーガー!」二人は口を揃えてそう言った。私はびっくりして、
「ハンバーガーって、パパやママと外に食べに行かないの?」
「うん、行かないよ」
「パパは忙しいし、ママはほとんど家にいないものね」それを聞いて私は驚いた。普段から子供たちをほったらかしにしているなんて。
「解ったわ、朝食食べて用意して行きましょう」
「はーい!」二人は嬉しそうに朝食を食べ始めた。
朝食の後、片付けなどをして、二人を連れてショッピングモールに出かけた。買い物の後は約束のハンバーガー。おいしそうに食べる二人を見て私は何とも言えない気持ちになっていた。
家に帰り、家事をしていると、主人からメッセージが届いた。
『雄太君に会った。どうやら込み入った事情があるらしい。もうしばらく子供たちを預かってくれとの事だ。それと、真理には気づかれないように、少し遅くなるかもしれない』それを呼んだ私は『解った』とだけ返信した。
時は確実に過ぎていく。真理と孫たちがいることが日常になってきたある日の朝、チャイムが鳴った。
「はい」カギを開けドアを開けると、雄太君が立っていた。そしてもう一人。
「
「ええ、居ますよ」そう話していると、子供たちが玄関へと走って来た。
「パパ」真菜が飛びつく。
「パパ久しぶりだね、今日はお仕事は?」雄哉が話しかけた。
「今日は、ママに大事な話があって来たんだ。後で呼ぶから、おばあさんといてくれるかな?」
「うん」二人は明るく返事をした。
「雄太君座敷で話そうか。芳子、真理を呼んできてくれ」
「解ったわ」私は真理を呼びに行き、真理が座敷に入ったことを確認して子供達と居間に戻った。
座敷では何を話しているのか途切れ途切れに声は聞こえるが、子供たちに聞かせたくないのだろうと思った。
30分ほど経っただろうか、主人が「子供たちと座敷に来て」と呼びに来た。私が子供たちを連れて座敷に入ると、雄太さんがここに座ってというように手招きした。そして、
「雄哉、真菜、パパとママは離れて暮らすことになった、二人はどっちについていく?セーノで言ってね、セーノ」
「パパ!」二人の声が同時に答えた。
「ママと行かないの、なんで・・・」真理がそう叫んだ。
「ママってさ、いつも自分だけ着飾って出かけてばかりで真菜の世話も僕に押し付けるじゃん。パパは忙しいだけで、僕の話も時間があれば聞いてくれた。真菜のこと頼むとも言ってくれたから」
「そうよ、お兄ちゃんがいなかったら私どうしていいかわからなかった。お兄ちゃんと離れるなんていや、パパと行く」
「そんな~・・・」真理はがっくりと肩を落とした。
「親権は父親で間違いないですね。お二人の意思も確認しましたし」と雄太についてきていた弁護士が言った。
「それと真理、お前は家から出ていけ、不貞をするような者を家に置いておくわけにはいかん」
「そんな、親にまで見捨てられたら私どうすればいいか、お母さん、お母さんは私を見捨てないよね」
「いいえ、真理、出ていきなさい。親子だから、親子だからこそしてはいけないことがあるのよ。あなたは育児放棄したうえに、不貞をはたらいた。そのお金はどこから出ているの?雄太さんが働いたお金でしょう。自分が蒔いた種は自分で刈り取るの。償いは自分で働いてしなさい。私達はあなたを養う余裕は無いの。居てもらっては困るのよ!」
私がそう言うと、真理は泣き崩れた。
その日の夕方、
「また来ていい?」不安そうに真菜が言う。
「もちろんよ、今度はお父さんとね」私がそう言うと二人はパーッと顔が明るくなって、頷いた。
「
「これから大変だろうが、元気でな。何かあったら連絡しなさい、出来るだけのことはする。真理と離婚しても孫は孫だから、頼ってくれ」
「ありがとうございます。これからもお世話になります」
そう言うと雄太君は二人を連れて帰って行った。
数日後、真理も出て行った。私達はやっと元の暮らしを取り戻した。
親子だからこそしてはいけないことがある。雄哉と、真菜が幸せになれるよう祈っている。
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