第3話 小学一年生と友だち
ボクは小学校に入る前にかみの毛を切った。かっこよくしてもらった。ボクは鏡を見るたびうれしくなった。
「未来、もう小学一年生ね。学校もきっと楽しいところよ」
お母さんがニコニコして言った。
入学式にはお父さんとお母さんと手をつないで行ったんだ。
ボクは紺色のブレザーに半ズボン、赤いネクタイをしてオシャレをした。
いつもと違うかっこう、かみ型もかっこいいから少し恥ずかしかった。
でも周りのお友だちも同じようなかっこうだったし、知らないお母さんは着物を着てる人もいた。
年上のお姉さんがボクの胸のところに赤いリボンを付けてくれて、入学式が始まるまで教室っていうところで待っていたんだ。
ボクのランドセルは青。ボクは空が大好きだから空と同じ青いランドセルを買ってもらった。
体育館へ向かう時にはすごくドキドキしたし、名前をよばれた時には大きな声で「はい!」と言えるか心配だったけど、ボクは頑張って返事をした。
担任の先生は優しそうな女の先生だった。
先生が黒板に名前を書いた。
「今日からみんなの先生になります。わたなべまゆと言います。よろしくお願いします」
こうしてボクの学校生活は始まったんだ。
一番最初に友だちになったのは、となりの席の「加藤来夢」くん。ボクの名前と同じ漢字があった。来夢くんは最初はおとなしかったけど、ボクにも学校生活にもだんだんなれてきたら、いっぱい話せるようになってきた。
ある日来夢くんが、
「今度の日曜日、うちに遊びにおいでよ」
と誘ってくれた。ボクはうれしくて早く日曜日になればいいなって思って、授業中も時々ニヤニヤしていたんだ。そしたら先生に
「真面目に授業しようね」
って注意されちゃった。
そしてまちにまった日曜日。来夢くんと近くの公園で待ち合わせして、
二人で来夢くんの家に自転車で向かったんだ。
公園を出発して、途中の周りの景色を見ながら二人で話しをしたんだ。
「来夢くんの家族は何人?」
「ボクには三才上のお姉ちゃんがいるんだ。それからおじいちゃんと、おばあちゃん、お父さんとお母さんとボクと合わせて五人家族かな」
「おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に住んでいるの?それにお姉ちゃんもいるんだね。ボクは一人っ子だから兄弟がいるなんてうらやましいよ」
「でもうちのお姉ちゃんは口うるさいよ。もう少し上品なお姉ちゃんが良かったな。でも頭がいいんだ」
「へえ。すごいね」
時々話をして、川ぞいの道をまっすぐに走る。ボクと来夢くんの自転車はスピードが少し出て軽快に進んで行った。
公園から自転車で走って行くと、あっという間に来夢くんの家に着いた。
来夢くんの家は新ちくしたばかりみたいで、家の半分から下はレンガで作られていて、その半分上はクリーム色の壁だった。まるで童話に出てくるお菓子の家みたいだと思った。
「いらっしゃい、未来くん。良く来てくれたわね」
来夢くんのお母さんが出迎えでくれた。
「こんにちは。これお母さんが焼いたクッキーです。みなさんでどうぞって言われて来ました」
「あら、気をつかってくれたのね。う~ん、箱の中からいい匂いがするわ。ありがとう」
来夢くんのお母さんはそう言ってクッキーを受け取ると、
「ゆっくりして行ってね」
と言って、ボクたちをリビングに通してくれた。
ボクは中に入っておどろいた。キッチンもリビングもピカピカで、リビングには黄緑色のじゅうたんが一面しかれていた。その端にはピアノが置いてあった。
「来夢くん、ピアノひけるの?」
「うん、あまり上手じゃないけど、お母さんに習っているんだ。お母さんは週に一回ピアノ教室をしていて、いろんな子供たちにピアノを教えているんだ。中には中学生や高校生もいるんだよ。ボクはお母さんみたいにピアノをもっと上手にひきたい。大きくなったら音楽の大学まで行くんだ」
ボクはすごいと思った。ボクは習いごとなんて何もない。でもとくにやってみたいこともなかったから、来夢くんがちょっぴりうらやましかった。
すごいよね、来夢くん。
ボクは夕ご飯の時に来夢くんのことを、お父さんとお母さんに話したんだ。そしたらやっぱり「すごいね」ってほめてくれた。
「ねえお父さん、お母さん、ボクも何かやってみたいよ」
「そうだな。未来はもう少し勉強頑張ってからだな」
お父さんが言った。
「そうね。まずは勉強第一。それからからいろいろ考えてみてもいいんじゃない?」
お母さんがふふっと笑いながら言った。
よおし、次のテストで百点取れるように頑張るぞ!
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