第11話 ピアスの穴
翌週の火曜日、藍子は朝から皮膚科の待合室にいた。この皮膚科は自宅近所にあり、優斗が小さい頃に何度か通った病院だ。
藍子は高校を卒業してすぐ両耳にピアスの穴を開けたが、その年の夏に穴の周辺が化膿してしまい、しばらくピアスをしないうちに穴が塞がってしまった。
それ以来、アクセサリーといえばネックレスのみだったが、最近は小ぶりなデザインのネックレスが似合わなくなったような気がしていた。
肌が少しくすんだせいだろうか。だからといって、大ぶりなデザインのネックレスは自分には存在感がありすぎるような気がした。
それで、またピアスをしてみようかと思い穴を開けに来院したのだ。
最新機器を取り揃えたと謳っているこの病院の壁は白く、待合室の片隅にはカラフルなキッズコーナーがある。
藍子は幼児だった優斗とよくそこで遊びながら呼ばれるのを待った事を思いだした。
二、三歳くらいかと思われる女の子がそこに座って絵本を読んでいた。母親は診察中なのだろう、静かに一人で本を読むその表情は真剣そのものだ。赤色のキルティングスカートから小さな足が伸び、とても可愛らしいその様子を藍子はじっと見つめていた。
女の子を育てるってどういう感じだろう。
藍子はその女の子を眺めながらそんなことを妄想していた。
「沢田さん、一番診察室にどうぞ」
名前を呼ばれ現実に戻された藍子は、返事をして診察室に入った。
「ピアスホールですね。ご存じかと思いますがホールが安定するまで約一ヶ月はファーストピアスを外せません。化膿しないように二十四金製のものをこちらから選んでください」
そう言ってその男性医師が見せたのは十二個並んだ誕生石のピアスだった。藍子は自分の誕生月である十二月のタンザナイトを指しながら、
「これでお願いします」
と言って、頭を下げた。
医師は藍子が指定した位置に黒いマジックで小さな印をつけると、ピアスガンを片手に持ち一瞬で穴を貫通させた。
「いかがですか」
藍子は医師に渡された鏡を手に取り、自分の
「ありがとうございます。あの、先生、それともう一つ、デコルテの下の方に目立つホクロがあるので取りたいんです」
と
「そうですか。ホクロの除去にはレーザーとメスを使った方法があるのですが、ホクロの大きさや状態によってどちらがいいか決まります。ちょっと見せてもらえますか」
医師にそう言われ、藍子はシャツのボタンを外し胸元を開いた。日に当たらないせいか白く艶のある肌が
「直径二センチ位で盛り上がりがあるタイプですので、メスでくり抜いた方がいいかもしれません。良性の腫瘍だと思いますが念のため」
医師の言葉にはいと頷き、その週の土曜日に予約を入れた。
デコルテが大きく開いた服はもう着る機会もないし、誰に見せることもないからと藍子はホクロをそのままにしていた。
それなのに、入浴や着替えの度にそのホクロが気になるようになっていた。
「よろしくお願いいたします」
頭を下げて診察室を出てから会計を済ませ、藍子は外に出た。
誰に見せるわけでなくてもいつまでもきれいでいたいだけ。
藍子はそう自分に言い聞かせながら、フレアスカートを
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