愛してたんだよ、本当に。

わたしの話

今でも覚えてる。高校から付き合ってた彼氏がいたけど半ば強引にあなたと付き合い始めたこと。大学の入学式でいかにも大学デビューみたいな似合わない茶色の頭をした男に話しかけられて。もちろんコミュ力なんてものは無かったけど、顔は悪くないし、背も高くて磨けば光りそうだった。なにより医学部生だし私のステータスにもなるんだよね。

　それほど面白くもないデートを2回して、3回目はたしかソラマチに行った気がする。吾妻橋の上で告白してきたんだっけ。ちょっと躊躇ったけど顔には出てなかったと信じてる。とりあえずOKしたけど、本当は他の男と1ヶ月くらい付き合ってた期間被ってるんだよね。

　初めてのお泊まりをした日、あなたは経験あるって言ってたけどいつまでもゴムの裏表が分からなくて私が付けてあげたよね。童貞なのはバレバレだよ。しかも下手くそだったし。

　それでもそんなダサいところも含めて好きだったし、ちゃんと付き合っていく気はあったんだ。でも会う頻度も、連絡の頻度もどんどん少なくなっていって。あなたは忙しいって言うけど、私の同期とヤってたのも知ってるし、私の友達誘って断られてたのも知らないと思ってる？他の女とホテルに入ってく写真も学年で出回ってたんだよ。

　なんで付き合ってるのか分からないし、将来有望な会社員捕まえたから別れました。これは私悪くないよね？

　今は外科医になったんだって聞いたよ。年収2500万円くらいあるんでしょ？彼氏？最初は結構稼いでたけど職場で色々あって鬱になって辞めちゃった。その後はコンビニバイト。だから別れちゃった。バイトとは結婚できないよ。それで最近はどう？また今度ご飯でも行かない？久しぶりに会いたいな。

　愛してたんだよ、本当に。

　私は飲んでいたビールのお会計を済ませて、店を出た。夜景や月の光を映す隅田川はキラキラと宝石のように光り輝いていた。今日も夜は長く、風は冷たい。