第8話 帰る
(ドシン!)
魔物は片足ではバランスを取らずに倒れた。
(バシン!バシン!)
最後の抵抗で尻尾や頭で暴れてくる。
(スパ)
(スパ)
刀で暴れる頭と尻尾を切ったら大人しくなった。
『うおー!!やったぜー!』
死んだ魔物をみてみんな嬉しそうだ。
『佐藤さん!すごいです!見直しちゃいました』
『佐藤!すげえな』
みんな褒めてくる。
『せ、先輩』
気絶していたアキが救護の人に支えられて群衆を掻き分けながらきた。
『アキ、助けるのが遅くなった。ごめん』
『いいえ。先輩、来てくれただけ嬉しいです。助けてくれてありがとう』
『あ、うん。そのあの時庇ってくれてありがとう』
なんだかアキの前だと照れ臭い。
『うおーなんだこれ?めっち丈夫だよ!すげえなおい!』
どうやら倒した魔物の解体が始まったらしい。
『あの?佐藤さん。もし良かった私と一緒に解体の様子見に行きませんか?』
アキとの会話が弾まないでいると横から知らない探検家の女性が話しかけてきた。
『私も』
『ずるいよマキ! 私も良いですか?佐藤さん』
僕は近くにいた人たちに無理矢理連れてからてしまった。
アキは少し唖然としていた。
『佐藤さん、佐藤さんこれすごいですよ。全然ナイフが刺さりません』
同じ探検家の女性が僕に話しかけてくる。
『ああ、そうですね』
『でも裏側は柔らかい、防具とかに使えそうです』
『あ。うん』
アキは砕かれたクリスタルに座っている。じっとこっちを見ていた。
『んーんーこい』
アキを見ていたらホワイトがズボンを引っ張って来て言った。
『あ。そうだな…………もう帰るよみんな』
『え、何もいらないんですか?』
『ん?ああ』
『もっと見ましょうよ、あ』
ホワイトが僕の手を掴んで無理やり出ていった。
ホワイトはテクテクと僕の手を掴んで歩いて行く。ホワイトが向かったのはアキの方だった。
『アキ』
『さっきの子たちとはいいんですか?』
『さっきのて?』
『あの女の子たちですよ』
『あ、あ別に。ホワイトが帰りたがってるし』
『そうなんですか。これから帰るんですか?』
『ああ、アキはもう少し休んで戦利品を貰って帰るといいよ』
『私も帰ります』
アキは辛そうではあるものの自力で立って言った。
『アキさんまだ』
『いいのもう動ける』
『そうですか、佐藤さんアキさんをお願いします』
アキの治療をしていた探検家の人が言った。
もときた穴の前に来た。
『抱っこして運んでくだい先輩』
『え、あ、わかった』
当たり前だ。立って歩くのですらままならないのにこの穴は登れない。
(むにゅ)
アキを背中で背負う。装備を外したせいかアキの大きな胸の感覚がダイレクトに感じる。
ロープでアキと僕固定してもらう。
『苦しくないですか?』
『大丈です。先輩』
縛ったせいで余計にアキの感触が背中に伝わってくる
(ザッ!バシ!ガシ!)
アキを背負って登るのはきつい。行きは簡単なのに帰りはキツイ。魔物にやられたのもあるが、人を背負っていくには厳しい傾斜だ。
『先輩。こんな体重の重い女嫌いですか?』
突然アキが変なことを聞いてくる。
『アキはそんなに重くないよ。僕が背負えるぐらいだし』
『何の励ましになりませんよ。先輩は力もちですし』
疲れてきた。頭が朦朧とする。何を話しているのかも分からなくなってきた。
『ああ、そうかもな、ヨイショ』
キツイ結構疲れる。
『先輩、さっきの戦いも良い動きしてましたもんね。やっぱり強いですよ。私なんて遺物を使ってあれじゃ。ダメね。先輩無しじゃ死んでた』
『ああ』
(ザク、ガシ。)
『ねえ、先輩は私のこと好きですか?』
『ああ』
『え、そ、そんな。へへへへ』
(どて。ガラガラ!)
足が滑った。
(ガラガラガラ!)
ちょとした窪みで止まった。
『先輩!大丈夫ですか? 先輩!嘘!』
最後にアキの声がして僕は気絶してしまった。
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