腹鳴り嫁
おもながゆりこ
第1話
昔、夫と結婚を決め、夫の家にご挨拶に伺った時の事。
緊張する私にお姑さんが開口一番
「末永くよろしくお願いします」
と言ってくれ、涙が出るほど嬉しかったです。
お舅さんも義兄さんも笑顔で温かく私を迎えてくれ、ほっとさせて下さいました。
ああこんな優しくて穏やかな家庭に育ったから、彼もこんなに優しい頼もしい人なんだとよく納得し、
私の方こそ、彼と彼の家族を生涯たいせつにしようと心に誓いました。
お舅さんとお姑さんがお寿司をとってくれ、みんなで和やかなひとときを過ごし、
ああこれから、本当に幸せな結婚生活が始まるのだと、幸せを噛みしめておりました。
お寿司をいただき、お茶を飲みながら、これからの事、
入籍の日取りや、結婚式をどこで挙げる、家をどこに建てる等、色々話し合っていたのですが、
ふと会話が途切れ、しんと静かになりました。
その静寂の中、私のお腹がぐーっと鳴ってしまったのです。
アラヤダ。笑うしかありません。
彼も横で仕方なさそうに笑っています。
するとお舅さんが
「ゆりこさん、いいんだよ。オナラくらい」
と、おっしゃいました。
オナラじゃないってば。
お姑さんがこうフォローしてくれました。
「お父さん、オナラじゃないよ。ゆりこさん、お腹が鳴ったんだよ」
オナラよりはいいけど、お腹が鳴るのも恥ずかしいですわい。
あーごめんなさいねー。
こんな腹鳴り嫁で。
あれから歳月は流れ…お陰様で、今も幸せです。
腹鳴り嫁、ここにあり。
腹鳴り嫁 おもながゆりこ @omonaga
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