拝啓、私が愛した人たちへ一
宮北莉奈
プロローグ 旅立ち
―ピッ、ピッ、ピッ、ピー
「……10時23分49秒。ご臨終です」
今、私の最愛の娘の美咲が12歳の若さで亡くなった。白血病だった。
「よく頑張ったね。ゆっくり休んでね」
と私は美咲の頭を撫でながら言った。
「なぁ、美咲の最期も見届けたことだし、もう帰っていいか?」
彼の言葉を聞いて私は唖然とした。6年前に離婚した元夫とはいえ、その言葉は聞き捨てならない。
「あなた、何言ってるの?離婚したとはいえ、娘が亡くなったのになんとも思ってないの?」
「お前こそふざけてるのか?離婚してからは美咲に合わせてくれず、今日急に連絡がきて来てみればこの状態。俺にどうしろって言うんだよ!」
と怒りの形相で病室から出ていった。
「あっ、ちょっと!……はぁ」
確かに彼の言い分にも一理ある。ずっと会わせてもらえなかったのに、会えると思ったらもう娘が危篤状態なんてね。私だって怒るわ。……どうするのが正解だったのかしら……。
―数日後
私は美咲の遺品整理をしていた。すると病室の机の引き出しからメモとともに私から親しい友達まで様々な人へむけた大量の手紙が出てきた。
―お母さんへ
私が死んだときにこの手紙を見つけたら、宛名に書いてある私の大切な人たちへこの手紙を渡してください。
私はこのメモを読んだとき、まだ12歳の美咲が死の覚悟をして、こんなにもたくさん手紙を書いていたことにゾッとした。そして、美咲がどんな気持ちでこの手紙を書いたかと思うと、胸が張り裂けそうだ。
「この手紙必ず届けるからね、美咲」
そう私は決心した。
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