第3話 帰りの電車

ガタンガタン

音を立てる電車に、

わたしは揺られています


さわざわさらさら

声をひそめた人の話し声が、

閉じた瞼の向こうから聞こえてきます


きらりゆらり

紺色に染まった夕暮れが、

窓の外の海には映っていることでしょう



この電車は、先へ進んでいるのです


この電車は、前へも進んでいるのです



一日を終える帰りの電車

揺られているわたしの耳には、

秋雨の音がかすかに聞こえます


明日に向かう始まりの電車

瞼を閉じたわたしの目には、

意味もない模様が浮かぶだけです


この先も続く一本の電車

一日を振り返る私の頭には、

知らない場所まで伸びる、

線路のことを知りません



わたしは今にいるのです

わたしは過去にもいたのです

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