秋雨

こたこゆ

第1話 幸せな女の子

 ぽたんぽたんと、

 管を落ちる水の音がするのです

 カランカランと、

 屋根にぶつかる雨の音がするのです


 景色を白くぼやかす秋雨は、

 今らしい寒さもつれてきました

 あともう少しと月を超えた暑さも、

 あっという間に去ってしまいました


 実は、少しだけ嬉しかったりするのです

 暑いのは苦手なので



 けれど借りた本を抱えながら、

 少し失敗したなぁとも思います

 こんなに寒くなるのなら、

 ちゃんと長袖を着てくればよかったと思います


 クローゼットに入った冬服は、

 どんなに暖かくて柔らかいでしょう

 吊り下げられた冬服のスカートは、

 もったりと首を長くして待っているでしょう


 少し、明日が楽しみだと思います

 制服は好きなので


 だあれもいない外廊下

 だあれも見てないあたし

 だあれも借りていない本



 とたんとたんと、

 上靴が歌うように音を立てているのです

 フウワフウワと、

 髪が躍るように風に舞っているのです


 少し寒い秋雨を眺めながら


 きっとこの瞬間に

 あたしよりしあわせな女の子は

 いないだろうと思うのです



 まだ、ぽたんぽたんと音がします

 まだ、カランカランと音がします

 まだ、秋雨は降り続いているのです

 だから、あたしもしあわせなままなのです

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