覚醒と仲間
始まりの朝
[ピピピピ、ピピピピ」
今日も朝7時に目覚ましアラームで起床する。
彼女は家でも学校でも普通の男子中学生を演じている、
しかし精神は完全に女性、名前は(
男子中学生としての本名は(田中正樹)だ。
なんと桃花はオレの体を使って(田中正樹)として生活しているのだ。
何とも図々しい所業だが、オレには何も出来ない。
出来るのは、桃花と心で会話する事と、五感や知識を共有する事だけだ。
幼稚園くらいまではオレの体はオレの物だった、
現在と立場が逆で桃花がオレの中に薄く存在していただけだった。
だが年齢を重ねる程に、頭のコブが小さくなり桃花の意思が強く表れ、
中学生になる頃には体を乗っ取られていた。
今ではオレの方が正樹に取りつく幽霊と言っていい存在だ。
生まれる前に双子の片方を吸収する事は時々ある話らしいが、
吸収したはずの双子に体を乗っ取られてしまうなんて事は
普通は起こらないだろう、知らんけど。
まして前世の記憶を残し自ら(妹の桃花)とオレに名乗るなんて。
まあ無駄な独り言はこのくらいにし、
アラームで起きない桃花をオレは優しく話しかけ起こす。
「早く起きて顔を洗え桃花」
桃花はオレの体をゆっくり起こしオレに話しかける。
「しかたないな~、今日も男子中学生の務めを、果たしてあげるよ~」
体を乗っ取ってる自覚が無い発言である。
登校は隣の家に住む幼馴染(伊藤真一)と毎日一緒だ、
桃花と精神が入れ替わっても全く気が付かない、一般的で
お気楽な男子中学生である。
だが、こんな冴えない普通の男子に桃花は恋心を抱いている。
桃花の転生前の年齢は、オレの推測では小学校の高学年くらい、
おそらく恋愛経験は無いだろう。
桃花はオレ(正樹)の振りをし真一と会話しながら学校へ向かう、
普通に会話をしているが、真一の視線に晒され少し緊張している。
五感を共有していると、分からなくていい事まで筒抜けで嫌になる。
何とか応援してやりたいが、今のオレの状態は幽霊と何も変わらない、
日ごろから感じてる無力感に疲れ最近は、
「消える事が出来れば楽なのに」
などと毎日考えてしまうようになった。
そして、身体を乗っ取った、妹への恨みが全くない自身の気持ちが不思議でならなかった。
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