第39話 連れてく理由
昼頃になった。
太陽が雨雲で見え隠れする。
と、大きな雨雲が太陽を隠し始めて雨が降り出した。
すぐに2人は傘を取り出して開く。
「予備の傘、ありますわよ」
「ああ。ありがとうございます」
シロシロから傘を受け取る。
道の両脇には背の高い草と小さな沼が見える。
カエルが数匹、ゲコゲコ鳴いているようだ。
……雨が止み、霧が濃くなり始める。
道の先はまるで見えないが、もう着くはずだ。
「もう少し歩けば着くはずです」
「ふむふむ、街の近くはこうなっていたんですのね」
まあ、俺もマップをよく覚えていたものだ。
チャプターやチェックポイントを通るイベントで、ペット騎乗して移動したものの……ファストトラベル使えるようになったら、そればかり使ってたからなあ。
俺自身の記憶力を褒めてやりたいよ。
「これ何? 辺りが全く見えない」
「霧だよ」
「霧? 誰かの魔法?」
「雨とかと同じ、気象現象。森で起きなかった?」
「全然」
ガラは少し肩を震わせながら、道の先をじっと見ていた。
おかしいな、森では年に数回は起きるはずなんだけど。
「もしかして、魔を毎日は狩ってなかった?」
「うん。街周辺なんて、腐ってる地域ほとんどないんだから。街周辺は週に一回、あとは街に帰ったり遠出して魔を探したりの繰り返し」
「ああ、頑張ってくれてたんだ」
「当然だよ、頑張らないと煽れないもん」
なんだその理屈は……。
しかし、街に戻ったらまたそんな毎日を繰り返させることになるのか。
んー、魔を狩るの飽きたって理由どうなんだと思ってたが。
さすがに可哀想か。
まあ、俺がゲームのシナリオ通りには死ななかったせいで悪い影響を受けた人たちのこと、気にするとキリがないけど。
妹ってのもあるし、やっぱ聞き入れるか。
ホントはシロシロに来て欲しいけど、さすがに頼り過ぎてるしなあ。
「ガラ。街にシロシロ様を連れて行ったら、2人で一緒に魔法使い探そうな」
「うん、探す……」
霧が徐々に晴れていく。
街に鎧騎士とか、来てないよな……?
ロックがいるから、来ても何とかなるのかもしれないが不安だ。
街の門を潜った先は、相変わらずのテーマパークっぷりで。
子どもがワーキャー騒いでいた。
「それでは、街のことはワタクシに任せてくださいまし」
「はい、お願いします」
シロシロは街の中へと歩いていく。
子どもがシロシロの周りに集まり、騒ぎ始める。
まるで、テーマパークにいる着ぐるみのような扱いだ。
「アタシ、ちょっと準備するからここで待ってて。お弁当とか補充してくる。……あ、お兄ちゃんはインベントリ開けないからその分も持ってくるね」
「ああ、行ってらっしゃい」
ん、いつもの調子に戻るタイミングだと思ったが、疲れてたのかな。
……いや待てよ。
俺が森から出たことないのにここまで案内できたの、普通に考えるとおかしいよな……。
何か怪しまれているのだろうか。
空から再び、雨が降り出す。
ま、怪しまれたとこで特に何も変わらないだろう。
門の下で雨宿りして待つか……。
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