第9話 アストラル
え?どういうこと?アオさんも『アストラル』に?
よく分からない状況すぎた。
「……………俺、酒飲めるぞ…?」
ほら、アオさんも混乱しちゃって意味わかんないこと言ってる。
「ブッ………年齢の事じゃないさ……フフ」
「…じゃなんで俺も…………?」
『アストラル』は確か18歳以下の子どもでないと入れない。でもアオさんはその条件にはもちろん当てはまらなかった。
「君は捜査じゃない。私と同じ、子どもたちをサポートする、オペレーターみたいな役割をやってもらうのさ」
ハカセはそう話した。
…そんな人もいるの?
初耳な役割を聞いてボクらは驚いた。
あれ?その反応見るとアオさんも知らなかったってこと?!
「なんで俺も巻き込まれてるんだ…?!」
「ええ?私言ったよ?『一緒に世界を救おうじゃないか』って」
「あの一緒、に『アストラルに入った』俺も含まれてるってこと…か………?」
「そういうこと♪」
ハカセはニマニマ笑って満足気に言う。
それに比べてアオさんは落ち込んでる。
えええぇ?こんなにボクら覚悟決めて臨んだのに結局は一緒にいれるの?じゃあなんだったんだ、昨日のことは。
心底呆れていた。
何も気づかなかったアオさんと情報を伝えるのが下手なハカセ。こんな2人が本当にアストラルの中心の人でいいのか…?
「ほら、勘違い二人組。そろそろアストラルに行くよ」
「いや、俺も行くなら準備をしないと…」
「はあ?行くのはアストラルだよ?」
「ああ。だから服とかの準備を…」
「………あのさ。馬鹿なの二人とも」
「「ん???」」
「『Astral』の拠点は"ヴェールランド"だよ」
ああ、ダメだこりゃ。
♦♦♦♦♦
あの後、ボクとアオさんはハカセの運転する車に揺られていた。
拠点はヴェールランドと言っても少し町から離れたところにあるらしい。
流れる景色を僕は見つめていた。横にアオさんがいる、という数分前まで考えもしなかったこの状況で。
でも安心していた。
アオさんを守りたいから強くなりたい、とは言ったものの守りたい対象が近くにいないんじゃ意味が無い。だから、今こうしてアオさんが横にいてくれるという状況はボクにとってはとても嬉しいものだった。
よかった、アオさんと離れることにならなくて。ああ、安心したらなんだか眠くなってきちゃった…な……。
そのままボクは眠ってしまった。
♦♦♦♦♦
「………ノ、起きて、ナノ」
誰かに体を揺さぶられた。アオさんがいつの間にか寝ていたボクを起こしてくれたのだった。
「……あ、……おはよ」
「おはよう。もうすぐ着くってさ」
そう言われてボクは窓の外に目を向ける。
…………あれ?こんなとこヴェールランドにあったっけ??
緑いっぱいの森林をとっくのとうに抜けていて、辺りは一面草原だった。
本来ならヴェールランドを囲う森林を抜ければほかの町につながってるはず。でも、今見えているのは草原…。ボクが知らないだけで、こんな所あるって事なのかな…?
寝起きであまり思考が働かず、とりあえずそう思うことにした。
キキーッと車が止まった。
「よし、着いたよ」
そう言ってハカセはエンジンを切り車から降りた。そして後部座席のドアを開けてくれた。
「さあどうぞ」
車を降りてまず目に入ってきたのは大きなお家。アオさんと住んでたとこより数倍は大きいかも。横に来たアオさんも驚きを隠せないようで口が開きっぱなしだ。
「ちょっと。まだ中に入ってないのにそんな驚くポイントあるかい?」
いやありまくりだよ。
ボクらが驚いたのは家だけではなかったのだ。
家の横には大きな木。風が通り抜けて葉っぱがサラサラと音をたたている。
そしてその後ろにはとんでもないくらい広い草原。所々お花が咲いている。
もしかしたらヴェールランドよりも緑が多い…?いやでもここもヴェールランドだって言ってたよね………?
色々と考えながらハカセの後をついて行った。
リンゴーン。
ハカセが大きな家の玄関のベルを鳴らした。
「私だ。お客人を連れてきたよ」
彼がそう言ったあと、家の中からパタパタと足音が聞こえた。
ガチャ。
ドアが開いた。
「ハカセ。随分と遅かったですね」
ツインテールの…ん?ボクより年…下……?
その子は小さな子だった。ボクが見た感じ10歳ぐらい………。
「ああ、ごめんごめん。急なアオの要望があったものでね」
アオさん、何かお願いしてたの?ボクは知らないから寝てる間とかだったのかな。
「この方たちですか、お客人というのは」
「そう!今日から仲間入りするナノちゃんとアオだ!!」
「えっと、ナノです、よろしく…」
突然ハカセに紹介されたのでとりあえず挨拶だけしておいた。
「初めまして。オペです。本日からよろしくお願いいたします」
この子、きっとボクより年下なのに言葉がとても丁寧だなぁ。きっと育ちがいいんだろうな、なんて考えていた。
「初めまして、アオです。よろしく」
アオさんがそう言うと少女はお辞儀をした。
ハカセみたいに握手はしなかった。
「ではご案内致します」
そう言って彼女は家の中に入って歩き始めた。ボクたちは少女の後ろを歩くハカセの後について行った。
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