神様との約束

悠比呂

プロローグ 話は好きですか?

ココに引っ越してきてまだ日が浅く、僕は案の定迷子になっている。


「あ~あぁ~、ここどこだろう?。まっすぐ歩いていたと思うんだけどな」


 僕は道に転がっている小石を蹴る。


 初めての町、ココに引っ越してきたからには家にいるより探検したいと思う気持ちに従って家を飛び出していた。


 最初は見る物すべてが目新しく感じ、楽しかった。僕は無我夢中で探索していた。その有様がこれです。


「帰ったら、怒られるんだろうな…やだなぁ……」


 僕はもう一度、転がっている小石を蹴る。肩を落としながら歩いていると司会の先にある建物が見えてきた。


「十字架だ」


 僕の幼稚園のお約束事で給食を食べる際に「感謝の言葉」を言ってお祈りをする。でも、ここは幼稚園ではない。そこは教会だった。


 全体がレンガ造りで出来ていて、窓ガラスは夕日が当たり煌びやかに彩りを映し出している。窓ガラスがきれいなのは認めるが、何かに惹かれる様に建物のドアを開ける。


 ドアを開けた先には僕と同じ背丈の女の子が一人いた。


「(僕と同じく迷子かな?)」


 僕は女の子の目に惹かれていた。左右で色が違うようだ。この時の僕は「オッドアイ」という言葉はしらないままだったが、子どもの心の中でも『綺麗』と感じさせるその瞳に目を奪われてしまった。


 そのせいかもしれない、思わず声を掛ける行動をするとは。


「こんにちは、君はココの町の子?」


 問いかけるも女の子は無言のまま教会の天井に顔を向ける。


「引っ越してきてばかりで、まだココの事をよく知らなくて迷子になっちゃたんだ」


 僕は女の子に振り向いてもらいたくて、しつこく話しかける。その願いがかなって女の子は僕を見ている。


 その顔は不機嫌そうに見えて、その瞳は一人でいたいと訴えかける。


 しかし、僕がしつこいものだから女の子の閉じていた口が開く。


「あなたは私が不機嫌なのが解らないのかしら?」


「そうだろうと思ったけど、僕はどうしても君と話がしたかったからさ。


 僕は女の子に振り向いてもらえるようにしつこく話しかける。その願いがかなったのか女の子は僕を見ている。


 その顔は不機嫌そうに見え、その瞳は一人でいたいと訴えかける。


 しかし、僕がしつこいものだから女の子の閉じていた口が開く。


「あなたは私が不機嫌なのが解らないのかしら?」


「そうだろうと思ったけど、僕はどうしても君と話がしたかったからさ」


 嘘はついていない。だが、女の子の気持ちを考えていない軽率な行動だったかもしれない。


「あなたには私がどう見えているのかしら?」


女の子は溜息を吐き、問いかけてくる。その間にこんな答え方をした。


「それを言うなら、君も僕の事をどう見えているの?」


 なぜ、こんな答え方をしてしまったのだろう。今思い返しても、もう少し気の利いた答え方があっただろうに。


「ふふふふっ、あなた変わっているわね」


 その女の子は吃驚いや、呆れているだけかもしれないが僕の顔を見て笑っていた。


「よく言われる」


 僕は笑顔で返す。


 女の子とようやく面と向かって話が出来る様になった。


 しかし、それも束の間の時間だったらしい。


 感覚なんて覚えていない。一瞬の出来事だった。僕の目の前が赤くなる。


 隣にいた女の子の隣には十字架があった。女の子は僕の手を握り綺麗な右の瞳から涙を流し、僕に何かを呟く姿を見た所で記憶は途切れた。




……… …… …




 「見たことない天井…」


 気付いたのは町の病院の中だった。親が警察に事情を説明されている。


 話を整理すると僕は教会で倒れていたらしく、教会の管理者が病院と警察へ連絡をしたらしい。何故、警察が呼ばれていたかというと僕の周りには血が沢山あったらしい。


 しかし、おかしなこちに体には傷ひとつ無かった。病院に運ばれ検査を一通り行ったがどこにも異常がないと医者からのお墨付きだった。


あの出来事は夢だったのだろうか?。それさえも解らなく僕の記憶は曖昧だった。


しかし、子どもの僕でも一つだけ思う所があった。


いつかまた、あの女の子に出会える、そんな気がした。

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