太陽
立花 ツカサ
太陽
「ひかりちゃんってさ、太陽みたいだよね。」
「えっ?」
教室の隅で一緒に話していたほのちゃんが、教団の周りに集まる集団を眺めてそう言った。
その中心にいるのは、サラサラストレートの少し身長の高い笑顔の女の子
そう、ひかりちゃんだ。
「みんなの中心にいてさ、明るくて、華やかで、本当に素敵。」
ほのちゃんの言葉に嫌味な感じなんて少しもなくて、ただただすごいなぁと思っているだけなんだとわかった。
ほのちゃんも私もあそこにいる人たちと話さないわけでもないし、避けているわけでもない。
ただ、時々二人で好きなアニメやテレビの話を自分たちのトーンで話しているだけだ。
「ねえ、今日どっちに帰る?」
後ろから声をかけてきたのは、ひかりちゃんだった。
私の学校は、校門を出ると右と左に道が分かれる。
「あっえっと、右かな。」
ひかりちゃんは笑顔になって「よかった。今日はみんな左って言うから。」と言って一緒に帰ろ。と言ってくれた。もちろん「うん。」と返事をして並んで歩く。
「ほのさ、保健委員長になったねぇ。」
「あっうん。」
そうだ、今日は世代交代ってことで委員長とか決めてたんだ。
「でも、ひかりちゃんも体育委員長でしょ。」
「まあねぇー」
いつもいつも、ひかりちゃんもふざけた言葉一つ一つにさえ嫌味はない。
「かわいい。」
と言われた時も、「えーありがとー!!嬉しい!!」と照れくさそうに言う。
「今日さー、天気あんま良くなかったからさ、頭痛くて。」
「えっ今は?」
「薬飲んだから大丈夫」
こんなふうに笑顔だと気づかないよな。私が思うひかりちゃんの長所と短所はこうやっていつも笑顔なところだ。
そんなにいつも笑顔だと気がつけない。
「でもね・・・5時間目の後、ほのちゃんが私の席まで来て『体調悪い?』って聞いてくれたんだー。」
気が付かなかった。
「ほのってさ、いつも人のこと見てなんでも気づいちゃうじゃん。みんなを見守ってるみたいで・・・」
すると、すっと前を向いて少し考えるような間を置いてからもう一度私に向き直って
「周りの人をあっためる太陽みたいだよね。」
と言った。
その顔は、明るくて、ひかりちゃんそのものだった。
次の日
「ほのちゃん。」
なーに?のほほーんとしたいつもの顔でほのちゃんは振り返った。
「ほのちゃんって太陽みたいだね。みんなをあっためる。」
「そうかなぁ?」
えー何それー?といいながらほのちゃんは笑う。
「あっなおちゃん。太陽が私たちが知ってる一番明るい星だとしたら、太陽から見た一番明るい星ってなんだろうね。」
なんだろう。
そうだ。ほのちゃんからみたひかりちゃんは明るい太陽で。ひかりちゃんから見たほのちゃんはあったかい太陽だった。
私にとっての太陽ってなんだろう。
誰だろう。
まだ見つけられる気がしないな。
誰かにとっての太陽は他の誰かにとってはそうでないことだってあるわけだ。
その人にとっての太陽は明るかったり、あったかかったり、輝いてたり、佇んでいたりするようにそれぞれなのかな。
みんないろんな太陽なんだな。
私も私の太陽を見つけたい。
私も誰かを助ける太陽になれますように。
太陽 立花 ツカサ @tatibana_tukasa
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