第5話
朝が訪れた。
相変わらずモフモフたちに囲まれ寝ていたので、暑ぐるしさのせいで目が覚める。
こいつらかわいいけど、寝ている時は本当に少し勘弁してほしい。
ああ、でもこいつらに囲まれて一緒に寝るのも昨夜で最後かな。
若干ここから一人で旅立つのは正直言って不安だが、これも女神さまの試練だと考えればいいのかな?とにかくウサにあって事情を伝えるか。魔力特訓、そして魔力制御について教えてもらった彼には本当に感謝しかない。
顔を洗うために水際まで行くと、ちょうどウサに出会う。彼は俺を見るなり、「今日でここから離れるのかい?」と声をかけてくる。
「え?どうしてそのことを」
「君が今日ここから旅立つと女神さまのお告げがあってね」
ああ、なんだ、ウサも女神さまから聞いたのか。
「それで、まあ僕も一緒に君と旅することにしたから、よろしくな」
「え??一緒に来てくれるのか?!」ウサが一緒に来てくれると確かに心強い、俺も一人旅はちょっと不安だったし、感謝しかない。でも驚いた、ウサがこの場所を離れることはないと思った。
「ああ、まあね。女神さまが君をサポートするために君と同行してと頼まれたのでな」首を傾げ、俺の目をじっと見つめてくるウサ。多分、俺がそれを望んでいるか、うかがっているのだろう。
「いや、一緒に来てくれるなんておもっていなかった。ありがとな」と笑顔で返す。
「そっか。では旅の準備をしようか」
「え?準備って、別に何もないぞ」俺の所持品は女神さまからもらった袋だけだぞ。毎日のように水とパンは補給されるから助かるけど。
「その女神様からもらった袋、ただの袋と思ってる?」
「いや、まさか。毎日パンと飲み水が入っているし、女神さまには感謝しているよ」本当に便利だよな、魔法って。まあ、俺が飢え死にしないように女神さまが配慮してくれたのだろうが。
「ついてきて」と言い果実の生る木へ移動するウサの後を追う。地面に落ちている果実を角で刺し、「袋にできるだけ多くの数を詰め込んで」と俺に指示した。
「え?わかった、けどそんなに多く持っていけないぞ」
「やってみたらわかる」と言われたので、地面に落ちている果実を袋に入れ始めた…始めたのだが、五つほど入れたときに気が付いた。袋に重みがない。中を覗いてみると、空っぽだった。
「おい、ウサ…」
「その袋は、女神さまが君のために特別に作ったものだ。君の魔力に比例して、物を入れる物量が決まるんだ。そして入れたものは全部別に区分けされる」
「なんか、すごい便利なものだな」それにしても俺の魔力量で袋のスペースが決まるって、だいぶあるんじゃないのか?
「100個ぐらい入れておいてよ、後で意味が分かるから」と、ウサに頼まれたので、100個ほど袋に放り入れる…けどまだ重みも何も感じない。魔法スゲーと思っているところだったが...
「ベム、あとは湖の水を入れておいて」
「へ?水って。。。だいじょうぶなのか?」麻のような布で作られた袋だぞ?というか、編まれたような布だぞ?それ以前に水を運ぶとか、無理だろ。
「袋の口を開けて水中に沈めるだけだから」
ウサが大丈夫というので、恐る恐る袋を水中に沈ませると、水がごぼごぼと袋に入っていく。袋の口が排水口のように、水が生きよい良く流れ込んでいく。
「⁇」もう何でもありのような感じだな。10分ほどたっただろうか、袋を水中から引き上げ、中をのぞくと若干濡れているがいまだに空っぽの袋が…そして重みも感じられない。
俺が水を汲み終えて岸に戻るとちょうどウサがたれ耳リスと共にこちらに向かってきた。俺が水を袋に流し込んでいる間に話し合いをしていたようだ。
「あまりよくわからないが、だいぶ水をため込めたみたいだ」袋をウサの前に置く。袋の中は相変わらず空っぽのようだが。
ウサがまじまじと袋を確認する。暫くして満足したのか、うんうん、と頷く。
「じゃあ、この袋は君が持っていてね。君の魔力とつながっているからあまり離れてしまうと中身があふれ出すからね」
それは確かにまずい、俺は袋を背中に担いだ。下手に袋から離れるのも危なっかしいので、常に身近に置いておくことにした。まあ、外見は空の袋を肩に担いでいるようであほくさそうに見えるが、しょうがない。それよりちょっと気になったことがある。
「ウサ、えっと、そのリスっこは誰だ?」そう、ウサについてきたたれ耳リスのことだ。
「ああ、この子も一緒に連れていくことになったから」
『え?そうなの?』と思うもつかの間
「よろしくね、私もちょっと外に興味があって、女神さまに昨夜祈りながらお願いしたら承諾してもらえた」と頭の中に彼女(?)の声が響いた。
「そ、そっか。よろしくな」
「うん、こちらこそ」なんか、すごい人懐っこい感じのやつで、女性っぽいからこのリスの名前はリズにした。知ってるわ。俺に名付けのセンスが皆無なのは。ほっとけ。
「それじゃあ、行くか」と一言、ウサが歩き始める。
「待て待て、どこ行くんだ?」
「適当でいいだろ、君ならどっちに行きたい?」
ちょっと考えた後、出た結論は…「どっちでもいいか!」だった。
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