「努力」のみで異世界に右も左もわからないまま放り出された?
@ozawasoujin
第1話
ここはどこだ?
目を開けると俺は深い樹海のどこかにいた。
まだ日が高く昇っているのに日光が遮られ、一面あたりが薄暗い。
人の痕跡が全くない。そして、完璧なほどの静けさ。風もなく、空気が重く感じられる。
「女神さま、確かに一からやり直しといいましたがこれはやりすぎでは」とため息をつきながらちょっと愚痴を言ってみる。
自分の手足や体を確認すると、確かに15,6歳ほどに若返っている。来ている洋服は、実に簡単な麻のような布のつっかぶりとズボン。これで夜をしのげるのだろうか?少し不安になってきた。
「待てよ、確か女神さまからもらった袋がどこかに!」と思い出しあたりを見回すと意外と大きな袋があった。中をのぞくと水筒、何かの葉っぱで包まれたパン、それに得体の知れない動物の皮が入っている。広げてみると俺がくるまって眠れるほどの大きさだ。
2,3日間は何とかやっていけると安堵し、太い木の根に座って少し情報を整理する。
最初の記憶は、深い眠りから目覚めるような感覚だった。時間の流れも全くわからない。
意識が戻り目を開くと、俺は見渡す限りに広がる野花の大地に横たわっていた。太陽もないようだが、あたり一面が温かく、明るい。
そして、隣に座っている白いワンピース風のドレスを身にまとった女性に気が付く。
俺は彼女の笑顔を見つめながらも声が出なかった。言葉などでは表現などできないほどにあまりにも美しすぎたのだ。
「意識が戻りましたね」鈴の音のように透き通った声。
俺はこの時点で悟った、この女性は神だと。
そして、彼女がここに来るまでの経緯を伝えてくれた。
俺の名は…前世の名前はもう覚えていない。女神さまが忘れさせてくれた。知識的な記憶は残っているがどのような人生を送り、どのように命を落としたのかは全く覚えていない。女神様いわく、俺の人生はあまりにも悲惨だったようだ。
唯一に伝えられたことといえば、俺は相当の努力家だったらしい。しかし前世でのその努力は全く実らなかったようだ。まさに理不尽を実体化したような生涯だったと聞いた。
「あなたは十分苦労をし、それも報われずに生涯を終えてしまいました。ここまで苦行を強いられても挫けずに生き抜いた貴方には、次の人生ではゆっくりと楽しんでもらいたいのです」
「なぜ、私なのですか?」と、聞いた。
その質問に微笑みながら、彼女はこういった「あなたのような人が、この世界には必要なのです」
暖かい掌が俺の額にそっと置かれた。
「こちらの世界で幸せになることを祈っています。そしてもしよければこちらの世界を良い方向にもっていってください」
詳しく聞きたかったが、もう時間切れだった。
また意識が遠のく際に最後に女神様から届いた言葉は「また夢の中で会うこともあるでしょう、それまであなたの思うままにこの人生を生きなさい」
彼女から授かった恩恵は「努力」
こちらの世界で俺の努力は絶対的に報われるという恩恵。
そして女神さまからもらった名前は「ベム」
俺はこれからベムと名乗り、新たな人生を始めた。
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