魔法少女の週末遊戯(後編)

 麗は美声で、どんな曲も卒なく歌った。一方、茜は上手いとも下手ともいえないレベルだが、大好きな魔法少女の主題歌は上手かった。

 バラードを歌う姿の麗が凛々しくて、茜は見惚れてしまった。右耳のみに開けているピアスも素敵だ。


 カラオケが終わると、麗のリードのもと二人は様々なショップに立ち寄った。お洒落な雑貨屋、少しお高いブランド服の店など、どれも田舎育ちの茜にとっては新鮮だった。

 途中、チャラい服装をした中年男が声をかけてきた。最初はナンパだと思って茜は身構えたが、どうやら麗の知人らしい。

「アレがアレでアレなんだよー。そこでアレ」

 男は同じ言葉ばかり繰り返し、茜には理解できなかったが、麗は物知り顔で「そうですね」と相槌を打っていた。

「アレでね。アレレレのレでね、ドでレレレ、アレだったんだよ」

「アレですね」

 と麗が返すと、嬉しそうに男はさらに続けた。

「アレのアレで、本当、レーのアレアレで、そしてアレなんだよね」

 そこまで言うと、男は満足して。「それじゃあ、また」と駅の方に去っていった。

「相手や話を理解したフリをしてかわすのも、処世術のひとつですわ」

 フフッと麗は笑った。


 夕方、K市の駅前のロータリーで、横田の車に乗り込んだ。

「あっという間だったね。楽しかった!」

 発車した刹那、茜が言った。

「遠足は帰るまでが遠足っていうでしょ。まだ終わってないわ」

 麗は微笑した。

「そういえば」

「はい?」

「私も考えたんだけど、パラレルワールドが変わる伏線」

「うん」

「私なら、髪の跳ね方とかではなくて、いっそのこと、一話で性別変えちゃうかなー」

 茜の発言に麗は噴き出した。

「あはは。それだと、一話目の茜ちゃんは男子で、今の茜ちゃんは女子ということね」


 I県K市から茜の家までは、トンネルを通った後に学園を通り過ぎることになる。その学園を通過する際、二人は異変に気づいた。

「いるよね」

「そうね。行きましょう。横田さん、一旦、車を止めて、待っていただけるかしら」

「はい」

 ハザードランプを点滅し、車は止まった。

「行くよ」

 茜は勢いよくドアを開け、飛び出していった。麗も続く。

「お嬢様、ちょっとお転婆になったなぁ」

 横田は独りごちた。


「楽しい週末にも関わらず、出たな! 化け物!」

 茜は学園入口に着くと、すぐさま変身した。

 顔は人間、腕が六本、足が三本の異形のものがいた。

「帰るまでが遠足。これも週末デートの延長戦ってとこかしら」

 麗も変身した。

「そう思うと、早く倒せなくなっちゃう」

「それでも、被害が出る前に、早く倒さないとね」

 麗は無数の氷の矢を出し、茜は壁状の炎を出した。

「私が盾になるから、麗ちゃんは攻撃して!」

「ありがとう。行きます」

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