マルムとヤミノメ
梶浦ラッと
-原典版-
空の国マルムは恒星からの日差しの反作用を借りて浮いている。
この星の存在する銀河の中心に、恒星があり、この星の衛星にも小さな恒星があるため、夜の心配はない。
そのためマルムに住む人々は、「ヤミノメ」と呼ばれ、真っ黒なクマを持っている。ヤミノメらは、それを誇りにしている。
ある天文学者は、『この星の衛星の恒星の寿命は、約700年だ』と言った。そして『生命が生存可能な光量、熱量が不足するのはあと30年だ』とも言った。
その日から10年がたったある日、衛星の恒星は寿命を迎えた。あの天文学者の論文に矛盾点が全く無かったことから、いつしか恒星泥棒説が提唱されるようになった。
その時疑われたのはヤミノメであった。彼らは地上の人から、我々と関わらない漆黒の目を持つ狂人と言われていたからだ。
ヤミノメはなにも反論しなかった。自分たちが疑われていることなど知らなかったからだ。
地上の人らは、巨大な摩天楼を建設しようとした。共通の敵を持つことによって結束した彼らは、地上史を簡単に塗り替える速さで建設した。
ヤミノメは地上の人らに奇襲され、無惨に殺された。平和を重んじる彼らは、武器を使おうとしなかったのだ。マルムが浮いているのも平和の為だ。そして地上の人らは、ヤミノメらが捨てて地上に舞い落ちた高文明の武器に振り回され、一人、また一人と落ちていった。
ヤミノメはマルムを革で覆い隠し、地上へ下ろした。そして落ちた地上の人を懸命に治療した。そして目覚めた地上の人らは、目の前にいる漆黒の目に驚きパニックになって刺した。その地上の人が持っていた、ヤミノメのものだった武器は暴れ、持ち主の左胸を刺した。
地上の人に非兵士がいなくなった頃、一人の地上の人が地を這っていた。名をマードックと言う。彼の心臓は右側にあったのだ。パニックは収まり、ヤミノメに感謝と畏敬の念を添えて友好関係を作ろうと彼は考えた。再び宙に浮いたマルムにただ一人、ヤミノメが居た。彼は地上の人を助けていなかった。
二人は出会い、誓いのハグをした。そのヤミノメは、マードックの右胸に鋭い刃を刺した。そのヤミノメは言った。「戦争だ」と。
マルムとヤミノメ 梶浦ラッと @Latto
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