季節ならべ
由兵衛(よしべえ)
第1話 秋
百日紅が目になじみ、椿の種が弾けるころ
見上げてドングリを探す
ドングリはまだ青い
金木犀が緑のつぼみを連ねる中
一輪の微かな香りを独り占めする
チョウが転がり、蟻が運ぶ、キリギリスは最後の唄を歌うのだろう
バッタや蝶は体小さく数が減り
ツクツクボウシを片手で数える
虫の音はセミから秋虫に譲られた
足を止めれば唄いだす
草むしりに勝利した
鉄棒の温度を確かめずに逆上がりをする
柊の若葉が丸い、自分も年を取った
最後のイチジクを取る
日陰に咲くアジサイに驚く
部活動なぜかいつも通りができない
笑って終わった先輩が重い
木の手すりの優しさに気づく
田舎から余ったブドウが箱で届く
ハロウィンかぼちゃを見かける
日焼け対策の覆面が外れ
陽射しの中で初めて素顔をみる
まだ硬い柿を齧る
ほんのり甘く
種はまだ白い
雲は薄く高く、空を広くする
トンボが舞う
田の緑に黄味がかった穂が垂れ
彼岸花が色を添える
風に負けぬように水を増し耐えろと祈る
兼業農家の収穫は台風の後
隅に残った稲を刈る
ケガしないよう見守って
藁で根元を結び干す
天日と記憶でうまくなる
藁くずを
踏んで歩けば虫が湧く
田の力は強い
汗がじんわり、風が気持ちいい
同じような形の雲が続く
背より長い影
誰ぞ彼との黄昏時
暗く涼しい公園で
ベンチに座り肩を寄せる
夕焼けは昏く深い
日の赤と空の青、雲の白と影の黒
黄昏の一瞬に全ての色が現れる
大きな月
星が灯ると、東の水平線に冬の大三角、西には夏の大三角
ボールが見えないサッカー
玄関で子の帰りを待つ
門限が早いと文句をいう
笛太鼓の秋祭り
激しい祭りが終わり
整骨院が賑わい
待合で話し込む
老害になったなと感じる
新米がうまい
古いお米は炊き込みご飯でうまい
キノコは怖いがワラビにゼンマイ
山菜を片手に収まる程度に摘む
秋刀魚が並ぶ
夕飯のシチューが旨い
お湯が出るタイミングが少し遅い
クーラーなしで眠るとき
部屋の隅の手持ち花火
扇風機をかたずける
いつもより少し早く子供を寝かしつけ
独りの時間を楽しむ
雨の匂いは消え
カッパの中は冷たい
自転車で駆け登る
体は熱く耳は冷たい
何でもない日の風が強い
街路樹の葉は降り積もり
寒くなるほど日を通す
お芋ほり、子供が抜けなきゃ大人も夢中
落ち葉の布団は雑草を永眠させる
寒さに目覚めて着る服を変える
事務所の菓子置き場にのど飴が常備され
コーヒーの粉を買う回数が増えた
いちょう並木の銀杏吹雪……クサイ
わが子のように愛でる山の紅葉は遅い
だが、微かの変化を楽しめる
地面をじっと見ると
千では利かないドングリの地
紅葉は先から色を落としは紅が広がり
枝に木に森に山へと広がる
そこに葉っぱ一枚とて同じものはない
でも皆、秋を目指す
テント設営、防災訓練
豚汁、アルファ米
べったりと、ただれた様に赤いザクロ
カリンの実が膨らみ落ちる
柿を干す
冬の前から
年明けが見える
椿は再びつぼみをつける
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