排
鳴平伝八
球
――あ、いい感じ――
右手から上方へ柔らかく投げられたボールが緩い回転をする。
投げ手がそれを追いかけるように足を踏み出し、1、2と小気味よく足を出す。
それと同時に、両腕を前方から後方へブンと振り下ろす。
踏み切った足とともに両腕が同じ軌道を添って上方へ振り上げられる。
ドンと音を鳴らして大きな体が空中へと高く舞い上がる。
弓矢のように引かれた右腕、狙いを定めるかのような左腕、三日月を描くような体躯に一瞬時が止まったような錯覚すら覚える。
引かれた腕が獲物を捕らえる。
ボールにインパクトした瞬間、止まっていた音が動き出す。
ドン
音と共にボールはほぼ直線に相手コートへ突き刺さる。
レシーバーはボールに反応できず、過ぎ去った跡を追いかけるだけだった。
一瞬の静寂の後、拍手と喝采が訪れる。
色違いのユニフォームを着た選手がひどく悔しそうにサーバーを睨む。
互いの士気が高まり合う。
ネットを挟み、熱気とプライドがぶつかり合う。
ボールを持ってはいけない。
触ってもいけない。
落としてもいけない。
相手のコートに如何にしてボールを落とすかを競う。
バレーボール。
排球。
排 鳴平伝八 @narihiraden8
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