第131話:扉の前では
竜胆たちが扉の前に転移すると、そこには多くのプレイヤーが集まってきていた。
「……なんだ、どうしたんだ?」
思わず竜胆が呟くと、彼らの中で一番顔を知られている彩音へ声が掛けられた。
「あの、大丈夫だったんですか? 私たちが転移したあと、なかなか扉が消えなくて、彩音さんたちも戻ってこなかったから……」
本来、ダンジョンコアを破壊、もしくは回収すると、中にいるプレイヤーの全員が扉の前に転移し、その扉は崩壊する。
しかし今回は、他のプレイヤーたちとは違い、竜胆たちは扉の中に残されていた。
そのせいもあり扉が崩壊することはなく、何かが起きるのではないかと多くのプレイヤーが警戒を強めていたのだ。
「……大丈夫です。心配をお掛けしました」
不安そうな女性プレイヤーへ、彩音が柔和な声で返事をすると、その言葉通りに扉の崩壊が始まった。
「こちらの扉の攻略は完了しました! 私たちは少し戻るまで時間が掛かりましたが無事です! 皆さん、ご協力ありがとうございました!」
彩音が星4の二重扉攻略完了を宣言すると、最初こそ多くのプレイヤーが顔を見合わせていたが、目の前には崩壊していく扉が存在している。
崩壊という事実が攻略完了を意味していることを、プレイヤーであれば誰もが知っていた。
「……本当に、終わったんだ!」
誰かがそう口にすると、この場に残っていたプレイヤーたちが歓喜の声をあげた。
「……なんだ、どうしたんだ?」
今までの扉攻略では、ここまでプレイヤーたちが喜ぶようなことはなかった。
それが今回は参加したほとんどのプレイヤーが歓喜の声をあげており、中には抱き合って喜びを分かちあっている者までいるほどだ。
「ここの扉が二重扉だって、協会も宣言していたからね。それだけ難易度の高い扉だと、プレイヤーたちも知っていたんだよ」
「だけど、その前に俺たちは星5の二重扉を攻略しているよな?」
「あそこは二重扉だって知らなかったから、普通に星5の扉を攻略したで終わっているんですよ」
恭介と彩音の説明を受けて、竜胆はなるほどなと頷くものの、そこで一つの疑問が浮かんでくる。
「……でも、星5の二重扉より、今回の星4の二重扉の方が、難易度的には厳しくなかったか? それに、報酬もよかったし」
星が大きければ大きいほど、その難易度が上がるのが扉の常識だ。
だが、今回は星5よりも星4の二重扉の方が難易度は高かったと竜胆は肌で感じていた。
「二重扉なんて、分からねぇことだらけだからな。そんなことを考えていたら、疑問ばかりになっちまうぞ?」
「こればかりは猪狩国親の言う通りですね。そもそも、二重扉が連続で現れた事例も今回が初めてのはずよ」
「……そうもそうだよな」
国親と影星の言葉を受けて、竜胆は納得するも、その表情は険しいままだ。
「……俺たちはまだ、扉について何も知らないのかもしれないな」
そんな竜胆の呟きに、恭介たちも真剣な面持ちを浮かべてしまう。
今回の真っ白な部屋にしてもそうだ。
スキルの強化や獲得ができる場所についての情報など、一切聞いたことがなかった。
もしかすると秘匿しているプレイヤーがいる可能性もゼロではないが、だとしてもこれだけ重要な情報を完全に秘匿できるものだろうか。
そして、強くなったプレイヤーの情報を協会が知らないはずもないだろう。
おそらくだが、あの真っ白な部屋に入ったのは、竜胆たちが初めてである可能性が高い。
「どうせ支部長への報告も必要になるんだし、そっちでまとめて話をしないか?」
「あっ! それ、いいですね!」
「だけど、堂村支部長に確認を取らなくて大丈夫かな?」
「あの支部長なら問題ないですよ。どうせ暇を持て余しているでしょうし」
「……あんた、初めて見るが、支部長に対して厳しいな」
それぞれがその時に感じた思いを口にしながら、竜胆たちは盛り上がるプレイヤーたちの中をあとにした。
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