第15話:スキル【ガチャ】とは
「……す、ステータス!」
竜胆はその場でステータスウインドウを開くと、スキル【ガチャ】の詳細を確認する。
「だぁー、もう! いろいろとあり過ぎて、ガチャについて確認するのをすっかり忘れてた! 扉に入ってから確認とか、マジで初心者のすることだろ!」
自分に苛立ちを覚えながらも、竜胆は急いで詳細に目を通していく。
「えっと……モンスターを倒すことでアイテムを獲得できる【ガチャ】が発動。確率でアイテムを獲得できるが、ハズレを引くこともある」
詳細には確率についても記されており、竜胆はそれを見て愕然としてしまう。
「……スキルの確率、1%だって?」
ガチャの当選確率は七つに分けられている。
一番低い確率のスキルが1%、二番目のレア装備が4%、続けてレアアイテムが5%、スキル熟練度が7%、普通の装備が13%、普通のアイテムが30%、最後にハズレが40%となっている。
ゲームのガチャなどは絶対に何かしらが当たるという思い込みがあった竜胆にとって、ハズレがあるという事実は完全に予想外だった。
「……あっ! もしかして、ゴブリンやソードウルフを複数倒した時にアイテムが倒した分出てこなかったのって、ハズレを引いていたからか!」
複数のモンスターを一定時間内で複数倒した場合、ガチャは自動的にまとめて行われる。
それが全てハズレであればそのように表示がなされ、当たりがあればそれだけが表示される。
初めてのガチャでは分かりにくい仕様に、竜胆は頭を押さえながら大きくため息をついた。
「……まあ、きちんと確認できていなかった俺も悪いけどさぁ、あの状況で確認しろってのも無理があるだろうが!」
地団駄を踏みながらそう愚痴をこぼした竜胆だったが、今までの疑問がある程度解消されたことで少しはスッキリした気持ちにもなっている。
しかし、どうしても一番欲しかったスキルの確率が1%だったことには落ち込まざるを得ない。
「これ、何匹のモンスターを倒したらスキルが当たるんだよ。ってかそもそも、スキルって何個獲得できるんだ?」
そこで再び詳細へ目を通していくと、そこにはスキル覧のところで1/3という数字を見つけた。
「これだよ、これ! ……ほほう、スキル【ガチャ】以外だと三つのスキルを獲得できるわけか。それで、それ以上のスキルを獲得した場合は、取捨選択が必要になると。……あれ? まだ何かあるな」
竜胆が見つけたのは、スキルのレベルだった。
スキル【下級剣術】にはスキルレベルが表示されていないのに対して、スキル【ガチャ】にはスキルレベルが設定されている。
「スキル【ガチャ】のレベルは1か。これが上がったらどうなるんだ? 獲得できるスキルの上限が増えるとかなのか?」
レベルが上がることで何が起きるのか、そこまでの詳細は記載されていない。
とはいえ、レベルが上がって損をすることはないだろうと考えた竜胆は、モンスターを倒していけば、ガチャが回せるだけでなく、スキルレベルを上げることにもつながるのではないかと考えた。
「まあ、スキルやアイテムを獲得するにしても、スキルレベルを上げるにしても、やることは変わらないってことか」
モンスターの討伐、それ以外にやるべきことが見つからない。
だが、獲得できるものの中で一つだけよく分かっていないものがある。
「だが……スキル熟練度ってなんだ?」
スキルもアイテムも知識として理解している竜胆だが、スキル熟練度という言葉に関しては初耳だった。
改めてステータスウインドウを隅々まで見ていくと、スキル表示のところでようやく発見した。
「……ん? なんだ、あるじゃないか、熟練度」
プレイヤーに憧れていた頃にいろいろと調べていたが、その中で熟練度という言葉を聞いたことがなかった竜胆だったが、彼のステータスウインドウには熟練度の数値がスキル【下級剣術】の横に記されていた。
「へぇ、熟練度が100%になったら、上位互換のスキルに進化するのか。だけど、すでに3.57とか、微妙に上がっているのはどうしてだ?」
熟練度はガチャで当てるだけではなく、モンスターとの戦闘でも上がっていく。
しかし、強いモンスターとの戦闘でなければ大きく上昇する項目ではなく、竜胆以外のプレイヤーのステータスウインドウには表示されていないものだ。
「……これも検証だな。しかし、どうして熟練度についての情報が出てこなかったんだろう。スキルに関する情報なら、協会から正式に情報が発信されていてもおかしくないと思うんだけどなぁ」
竜胆にしか見えていない項目だということを知らない彼は、そんなことを呟きながら疾風剣を握りしめた。
「よし、ある程度の情報は集まったけど、まだまだ検証は必要だな」
周囲に視線を向けると、右の方に森が広がっているのが見えた。
「……あっちに何かいそうだな、行ってみるか」
プレイヤーになったことでモンスターの気配に敏感になっていた竜胆は、微かな気配を感じ取り、その足を東の森の方へ向けた。
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