第11話 vsケルベロス
「ブースター起動」
ブースターを噴かす。そして地面を蹴り、敵の眼前へと迫る。
「グガァァアァァ!!」
ケルベロスも俺の接近に気がついたようで雄叫びを上げ、威嚇してくる。
俺は一瞬でケルベロスの懐へ入り、下から首を切断しようと切り上げた。だが、それは黒い渦のようなもの阻まれてしまう。
その時、脇腹付近で何かがぶつかる音がした。視線を落とすとケルベロスの前脚がすぐそこまで迫り、ビットがシールドを張り防いでいた。
ルーファスのおかげか。
「助かった」
《安易に飛び込むのは遠慮してください。敵の能力はまだ分かってないのですから》
「使わせないと分からないだろ?」
《安全に》
「わかったわかった」
お母さんかよ。
俺は刀に魔力を流す。
そして前を見ると、目の前にいたケルベロスが消えた。まるで地面に潜るように。
「逃げたのか?」
《魔力反応もないですね》
「気をつけてください! ケルベロスは姿を消して攻撃してきます!」
後ろから浩介の友人の声が聞こえてくる。
「なんだと!?」
俺は彼女の声を聞いて急いで周囲を見渡す。
「ルーファス、なんかわかるか?」
《いえ、一切の気配がありません》
「念の為、彼女らに結界を発動してくれ」
ルーファスが指示に従い、彼女らの周囲に結界を発動する。
「オーケー、そしたら……残りのビットで手当たり次第撃つんだ」
《それは危険では?》
「攻撃を喰らってからだと遅いだろ? それに虱潰しに撃っていったら出てくるかもしれない。俺を中心に撃つ」
《……かしこまりました》
俺を中心に回るようにビットが集結し、外を向く。そして一斉にレーザーを照射する。地面を抉り、壁を削り、砂煙を上げながら撃ち続けた。するとどこからか「グギャッ」と鳴き声が上がる。
「どこだ?」
周囲を見渡すがまだ姿が現れない。
「上ですッ!」
後ろから先ほどの子が叫ぶ声を聞く。同時にルーファスが《魔力反応有り、上です》と言う。
俺は上を見た。
眼前に迫り来る前足。
咄嗟に腕で頭部を守った。しかし、ガードした腕ごと薙ぎ払われ、背中から壁に激突する。
「グッ!!」
くそッ、気が付かなかった……。上だったか。
《申し訳ありません。反応が遅れました》
「強いな、さすがイレギュラー」
俺は威嚇として、前腕部に内蔵された小型ランチャーを放とうとした。しかしガチャ、ガチャ、と音は聞こえるもののそこから放たれることはない。
《先ほどの攻撃で損傷してしまったようです》
「だな……他に異変はあるか?」
《ブースターが少し破損してしまった程度です。過度な出力を出さなければ問題ないでしょう。エネルギー残量にも余裕があります》
「オーケー、そしたら————『グゥラオォォォオォォォ!!!!』」
俺の声を遮るように怒り狂った様子で雄叫びを上げるケルベロス。
三つの頭、それぞれが口元に魔力を集め始めた。
魔力は増え続け、これ以上溜まる場合の予測をルーファスが計測し、頭部アーマー内の視界に表示させる。その魔力量は放たれれば直線上は全て焼き払われるほどのものだった。
「おいおいおい!」
《地上で放たれればあれが通ったところは一切を残さないでしょうね》
「ああ、あれはやべぇ」
俺は後ろを振り返る。そこには負傷し動けない浩介とその仲間たちが……。
ここから動くわけにはいかないな。
「ビットのシールドで耐えれるか?」
《先ほどよりも魔力量は格段に跳ね上がっています。おそらく持って数秒でしょう》
「そうか—————魔禁結界、展開だ」
《かしこまりました》
待機していたビット兵器が四機、ケルベロスを囲むように展開。
それぞれが光を発し、結界を発動する。
これでやつは魔法が使えなくなるはずだ。
結界が完全にケルベロスを囲む。
すると想定通り、ケルベロスが溜めていた魔力は空中に霧散し消えていった。
「よし、うまく発動したな」
《はい。それではプラズマ砲、エネルギー充填開始します》
「ああ」
俺の背後に次元収納が大きく展開され、その中から砲身が出現する。
「ようやくこいつを使う時が来たな」
ケルベロスは何が起きたのか分からない様子で、再び魔力を集めようとしてもすぐに霧散し集めることができていなかった。
ついには体当たりで結界を壊そうとするように。
そうやって暴れても無駄だ、ドローンを壊さない限りはな。
縦横三メートルはある砲身が回転し、徐々に加速していく。周囲にはバチバチッと稲妻が飛び交い、砲身は青白く輝いている。
俺はプラズマ砲の隣へ移動し、チャージ完了を待つ。
《充填完了しました。いつでもどうぞ》
「————撃て」
俺の合図と同時にプラズマ砲が発射される。
砲身に溜められた荷電粒子が直線上に放出され、ケルベロスを貫かんと進む。
必死で回避しようと結界を無意味に攻撃するケルベロス。一瞬で到達し、悲鳴を上げる間もなくその体は塵も残さず消滅した。
代償として結界を張っていた四機のビットも消滅してしまった。
《お疲れ様でした。満足のいく結果でしたか》
「わかるか」
《はい。口角が上がっていますよ》
「おっと」
どうやら無意識に笑っていたようだ。
「さて、あいつらはっと」
俺は後ろにいる親友とその仲間たちへ声をかけにいく。
「やぁ、相変わらず無茶苦茶するな〜」
そこには目を覚まし、こちらを見て笑う親友——浩介の姿があった。
「ようやく起きたか」
「ああ、助かったありがとう」
「なんてことないさ。使いたかったものも使えたからな」
「俺はついでみたいなものか?」
ハハッと冗談を言うように言ってくる浩介。
「そんなところかもな」
「嘘つけ、ありがとうよ」
「いいさ、気にすんな」
「あー……そろそろ私たちにも紹介してくれないか?」
赤毛の女の子が気まずそうに浩介へと声をかける。
「あぁ、そうだな。こいつは俺の親友の——」
「初めまして、黒瀬健太だ。主に深層とかを攻略している」
浩介の紹介に合わせて名乗る。
浩介以外、他三人が目を見開く様子が見てとれる。
「深層探索者……ッ、あの強さも納得だな。私は来栖灯火だ、今回は助かった」
「私は由良涼香です。ありがとうございます! おかげで生き残ることができました」
「俺は神田剛だ。あんたのおかげで命拾いしたよ」
三人と挨拶、そして握手をした。
《長居は危険かと》
そうだな……。
俺は四人を見渡し「もう動けそうか?」と問う。
それに全員が「大丈夫」と答える。
「そうしたら地上に向かおう。話はそれからだ」
「それもそうだな。ここだと魔物も寄ってくるだろうし」
「そうですね」
全員の同意を得たところで俺たちは、地上へ向かうための道を歩き出した。
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