第10話 到着
いつの間にかイレギュラーの魔物は元の位置に戻っていた。
「あいつなぜ戻ったんだ?」
「わからない……」
「出たら攻撃をしてくるとかかも?」
涼香がそう呟く。
「かもしれない。ところで剛、配信はどうなっている?」
「同接が見たことのない人数になっているぞ。現状を教えてくれる人も多いみたいだ」
剛がスマホを取り出し、確認した。
「仮称——ケルベロス……か」
「ああ、確かにそんな見た目だ」
「あいつがケルベロスだとして、ハープの音色を効かせると寝るんかな」
灯火は前に出てきて呟く。
「グガァァァァァァ!!」
三つ首が同時に咆哮を上げる。
「限界か……とりあえず、首を落とすことを目標にするぞッ!」
それを開戦の合図に浩介が声を上げる。
「ああ!」
「わかりました!」
「了解ッ!」
三人がそれぞれ返事をし、構えた。
————戦いが始まる。
接近し、前足で引っ掻くように攻撃を繰り出すケルベロス。
それを剛が盾で受け止め、その隙に浩介と灯火が首を狙って刀を振る。
涼香は彼らにバフ魔法を掛けてサポートをしている。
「ハァッ!」
「おらァッ!」
二人の刀が左右の首のを切断しようと迫る。
刀を振り切り、素早く離脱した。
「どうだ?」
「手応えはあったぞ」
が、ケルベロスの首は切断されることなく、そこに存在している。
「「な……」」
「えっ」
「切れてすらないのか!?」
驚きの反応を見せる四人。
その一瞬の隙をついて、ケルベロスが炎を吐く。
「回避ッ!」
それに気がついた浩介が指示を飛ばす。それぞれ左右に回避し、攻撃を再開する。
「灯火は左から、俺は右から攻撃する。剛は奴の気を引いてくれ! 涼香は後方から魔法攻撃を!」
「了解!」
「こっちを見ろぉ!」
剛がケルベロスの正面に立ち、スキルで挑発する。
狙い通りケルベロスは剛へ視線を向け、姿勢を低くした。
その時、突如ケルベロスが爆発。後方に構えている涼香の魔法が直撃したようだ。
「ナイス! 俺達も行くぞッ」
「あぁ!」
浩介と灯火が左右から攻撃を仕掛ける。
が、空振りに終わった。
「どこに消えたッ!?」
全員が周りを見渡すが姿どころか気配さえ掴むことができない。
「あそこだッ」
剛が奥の壁際にいるケルベロスに気が付く。
ニヤリと笑うような雰囲気をみせ、ケルベロスはおもむろに三つの口を開く。
それぞれの口に魔力が集まり始める。それは徐々に大きくなり—————ドラゴンブレスとまではいかないもののくらえばひとたまりもないことは明白なくらいの威力を持つ。
それが三つだ。
溜められていく魔力の圧で地響きがゴゴゴと鳴り始める。
「まずいッ」
「魔力がたくさん集まっています!」
浩介と涼香が声を上げる。
「シールドをッ!」
「はい!」
前方に何枚も重ねたシールドを配置する涼香。
放たれる前に全員が結界の範囲内に入ることができた。
「ガァ゛ァ゛!!」
そして放たれる。
放たれた魔力は一直線に進み、シールドに直撃。
一枚、また一枚とシールドが破壊され最後の一枚となる。
その一枚もつい割れ、四人は死を覚悟するような表情をしたり、目をキュッと閉じた。
だが、一向にその時は訪れなかった。
浩介は目撃した。後ろの入り口————そこから何かが飛翔し、眼前に存在するシールドを形成したことを。
「なんだこれは……」
◆◆◆
「もうすぐか?」
《はい。おそらくこの上の階かと》
「深層に一番近い……下層の一番下か。急ぐぞ!」
《はい》
もうすぐあいつらのところか……無事でいてくれよ……!
焦る気持ちを抑えつつ、全速力で向かう。
深層から下層ボス部屋に到着。すぐに処理しようと思っていたがそこはもぬけの殻だった。
《イレギュラーに襲われた可能性があります》
「なんにせよ時短になった。気にせず向かうぞ」
《はい》
そして、ルーファスの案内で親友の浩介へ渡したアイテムの信号を頼りに進む。
向かう先からは常に地響きのようなものが聞こえてくる。
「この先だな」
《そのようです——高魔力反応検知、大規模な攻撃がきます》
「なんだと!? ビット兵器射出。先行して防げ」
《かしこまりました。次元収納起動、ビット兵器を四機先行します》
ルーファスがビット兵器を飛ばし、先に行かせる。
俺も速度を上げ、全速力で向かう。奥でシールドを張っている探索者とそれ目がけて走る浩介を発見する。
「見つけたッ!」
《高出力、魔力攻撃が放たれました。ビット兵器展開、レーザーシールド発動。防ぎます》
あと少しで到達するというところでルーファスが敵の攻撃を検知し、防御する。
「俺もすぐ行く。それまで防いでいてくれ」
《かしこまりました。想像以上の威力ですのでお早めに》
「わかった」
そのまま進み続け、開けたところに出る。
見渡すと左には三つの頭を持つ魔物が攻撃を放っており、その直線上に困惑する浩介と仲間達がいた。
三つ首の犬頭……ケルベロスみたいだな。
そう考えるも、俺はすぐさまケルベロスへ攻撃を仕掛ける。
再びブースターを噴かし勢いをつけ、ケルベロスの横腹へキックを喰らわせる。
「ギャンッ!」
攻撃が直撃し、なんとも犬らしい悲鳴が聞こえてくる。
ケルベロスはよろけ、攻撃を中断させることに成功し、俺は浩介の方へ向かう。
攻撃が中断されたことで奥に居た彼の仲間らしき人達も浩介へ駆け寄っていた。
「ルーファス、防御解除。ビットはそのまま空中で待機」
《かしこまりました》
「誰です?」
回復魔法をかけている女性が怪訝な表情を見せ、俺にそう言ってくる。
「大丈夫そうか? 浩介は」
俺は浩介へと声をかける。
「名前を知っている……? 知り合いですか?」
「黒瀬健太。彼の親友だよ」
「そうなのですね。助けていただいて感謝します」
「ああ、で、大丈夫そうか?」
「なんとか——」
俺の問いに彼女が答えようとした時、
《攻撃を検知。防御します》
ルーファスがケルベロスからの攻撃を検知し、防御してくれる。後ろを振り向くと四機のビットでシールドを形成し、炎を防いでいた。
「助かった」
《戦闘中に油断は禁物です》
「すまんすまん、それじゃあさっさと片付けようか。高振動ブレードを出してくれ」
《援護はいかがしますか?》
「四機回してくれ。残りは彼らの守りに」
《かしこまりました》
すると次元収納が開き、俺の手元に刀2本が出現。手に取る。
「さてと……やりますかぁ」
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