第15話 見たくなかった景色
I
ただ、彼女を観るのが好きだった。段々とその気持ちは積もり積もっていき、それは信仰や崇拝の域に達していた。
「EmiRy……!」
私はいつだってEmiRyのことを考えてた。彼女が手掛けた楽曲やファッションアイテム、そしてグッズも集め続けた。
そんなある日、彼女に転機が訪れることとなった。そこから、不幸の連鎖が音を立ててやって来た。
9
「はぁ…はぁ」
これは、私の記憶!?大切なことなのに、EmiRyのことを忘れてるなんて…
でも、他のことが思い出せない。この後、EmiRyはどうなったんだっけ?
ペンダントを集めたらきっと、どうなったのかを知れるかも知れない。
全方位に張り巡らされたEmiRyを見ながら、アイツに気をつけて、先を行くことにした。
#
「……。」
ペンダントを見つけ、彼女の記憶の欠片を見た。
やはりEmiRyのあの事件に関連して、彼女はこの世界を創ってしまったのだと、改めて認識した。
「……なにもなければいいけど。」
何もないなんてことは、きっと無いだろう。それでも、そう思ってしまった。
♭
「榊の言ってた通りってわけか…」
EmiRyというアーティストの辿る末路は非常に後味の悪いものだった。
彼女が世界を創ってしまった理由にもなり得るわけだ。
ペンダントから得た情報だけでもかなり重い話だった。ここにさらに追い討ちが掛かってしまうのか……。
「これは……彼女を救うことが出来るのか?」
最後に決めるのは彼女だ。このままではきっとここに残ってしまうだろう。
それでもーー
俺は、榊のように救うことが出来るのか?どうすればーー
×
しばらくペンダントを探していると、二人組の男の子の方と合流した。どうやらペンダントを一つ見つけたらしい。
アイツに追いかけられながら部屋を進んでいくと、額縁の中にペンダントがあるのを発見した。
「あった!ペンダント!」
椅子の上に立ち、壁に掛かっていたペンダントを手に取る。これで、またEmiRyを思い出せるかも知れない。
しばらくすると、フッと意識が途切れた。記憶の欠片に向かってダイブをしているような感覚になって、深い海に沈んでいった。
II
「なん…で…」
EmiRyは、視覚と聴覚を失った。
原因は、彼女が乗っていた車に、乗用車が追突したからだ。車は大破し、EmiRy以外に乗っていた四人は、その場で死亡が確認された。
追突した車の運転手は、飲酒運転であり、居眠り運転だった。気がついたらアクセルを踏み、EmiRyの乗った車に突っ込んでいたらしい。
運転手は重症を負ったが、命に別状はないらしい。
私の父親だった。
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