エレベーター

これは私と友人Aが一緒に体験したことだ。


ある日、友人B宅にAと一緒に遊びに行くことになった。

Aと駅で合流してお菓子を購入し、B宅に向かう。

何度か行ったことがある家だから、特に迷うこともない。


到着してマンション1階のエントランスの中に入り、エレベーターの前に立つ。

ボタンを押して、どこの階にエレベーターがあるのか確認するために上を見上げた。

扉の上部に取り付けられている液晶には、階数と共に、↓の表示が映っていた。

上から降りてきていることが分かる。


そして、ほどなくして扉が開くと、中には女性が一人立っていた。

清潔そうな黒髪に、普通のワンピースを着ている女性だ。


「あ、このエレベーター地下に行きますけど、乗りますか?」


「いえ、上の階なので大丈夫です」


問い掛ける女性に、私も普通に応答した。

私の返事を聞くと、エレベーターの扉は再び閉まっていく。


もう一度エレベーターのボタンを押して待ってから、程なくして戻ってきた箱の中へと乗り込む。

私は7のボタンを押し込んでから、Aと一緒に上っていくエレベーターの箱の中で、ぼうっとパネルを眺めていた。


「あ」


Aが唐突に声を漏らした。

私は驚いて、Aの顔をまじまじと見つめる。


「どしたん?」


「このマンション、地下ないよ」


パネルを見てみると、ボタンは1階までしかなかった。

怖いというより、大いに驚かされた話であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る