死神の華
兎束作哉
第1話 葬送華
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いつからか、人が死ぬとその人の身体から芽が出、そして肉体を養分にするかのように花が咲くようになった。残るのは、衣服と装飾品のみ。肉片も、骨も全て花が生長するために吸い取られ、跡形もなくなる。遺族は、悲しむ暇も、惜しむ暇も無く、ただ残った一輪の花を見て、泣くことしかできなかった。
そう、世界が変わり葬儀屋や火葬業は衰退していった。骨は残らずとも、墓を建てたいと願う遺族がいたため、全てが全て無くなったわけでは無いが、葬儀関係に金がいらなくなったと、新聞でもニュースでも広く報じられた。
死人が残すのは、一輪の花だけ。その一輪の花さえも時がたつと枯れ、腐敗し地に戻った。その死人に生える、咲く花のことを人々は「葬送華」と呼んだ。
人の身体を養分として咲く葬送華は、店先に並ぶどんな花よりも美しく、異質で異様で、葬送華を裏で売買する組織なんかもうまれた。葬送華は高値で取引されるのだ。また、一般人が葬送華を上手く育てられるはずもなく、三日ともたずして枯れてしまう。
葬送華は未だ謎に包まれている。
何故、突如死人が花に変化するのか。葬送華は何を意味するのか。
人によって、咲く花は違う。ある専門家は、家紋だといった。ある専門家はその人が好きな花だといった。ある専門家は、うまれた土地で咲いていた花だといった。でも、どれもただの仮説であり、正しいことは何もわかっていない。
そんな葬送華は、いつの間にか私達の世界の「あたりまえ」になっていった。
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