【完結】S邸の話

うにどん

某人気心霊配信者の投稿より

 今回のゲストは心霊屋敷に泊まってみたで有名なオカルトライターの篠崎さんです! いやぁ~、三ヶ月ぶりですね~。


――そうですね、三ヶ月ぶりですね。


 聞いたところによると忙しいとか。


――そうなんですよ。此処に呼ばれてからイベントに引っ張りだこな上に書籍も売れてウハウハですよ。


 あっはっはっは! それは良かったです! さて、今回のテーマは『忘れられない心霊体験』! どんなお話を聞かせてくれるんでしょうか。


――まず、この写真の見て下さい。


(古ぼけているが立派な白い洋風の屋敷の写真が表示される)


 凄く立派なお屋敷ですね~。


――この屋敷は僕が最初に泊まった心霊屋敷です。つまり、僕の原点とも言える屋敷ですね。あ、ちゃんと所有者には映しても良いと許可はとっておりますのでご安心を。


 へえ、これが。一見すると立派なお屋敷ですが・・・・・・。


――今から10年前、務めていたオカルト雑誌を辞めてフリーになった時の話です。僕がオカルトの仕事をしていると聞いた地元の友達から、調べてほしいと連絡がありました。この屋敷を取り壊すために。


 取り壊す!? こんな立派な屋敷を!?


――友人、仮にTとしましょう。Tの家は詳しくは言えませんがとある業種では有名な会社でこの屋敷は近所からはS邸と言われ、誰もが知ってる有名な屋敷でした。僕はその事を知っていたため、どうしてか詳しく聞いたところ。Tはこう切り出しました、S邸には開かずの間があると。


 開かずの間ですか~。なんていいましょうか、凄くありきたりな話ですね~。


――僕も聞いた時はありきたりだな~と思いましたよ。でも、話を聞いた限り開かずの間にするしかなかったといった感じですね。


 つまり、訳あって開かずの間にしたと。


――この屋敷が建てられた明治頃。その当時の当主の妻が開かずの間となった部屋で隠れて愛人と逢い引きしていたそうです、ですが当然、このことはバレてしまい、怒った当主は二人をその部屋に閉じ込めてしまったそうです。閉じ込められた妻とその愛人は毎日、出してとドアを叩き続け、最終的には首を吊って亡くなったそうです。


 う~わ~。凄まじい話ですね~。それで、その後はどうなってんですか?


――それ以来、誰も居ないのに人の気配がする、内側からドアが叩かれる、窓から首を吊っている男女が見えると使用人達が怖がって、誰もあの部屋に入りたがらないという状況が続き、トドメにその部屋で使用人の男が首吊り自殺を、亡くなった使用人の男は妻の愛人の一人だったそうです。


 なるほど、それで部屋を開かずの間にしたという訳ですね。


――ええ。Tやその兄妹達もその部屋の前を通るたびに人の気配を感じたり、内側からドアを叩く音を聞いていて、怖くて仕方なかったと言っていました。


 ふむ。確かに曰く付きのようですが、どうして屋敷を取り壊すという話になったんですか?


――その開かずの間でTの母が浮気相手と共に首を吊りました。


 ええ!?


――Tの父が入院すると家にT達が居ない間を狙って愛人を連れ込んでいる事が発覚しまして、どうするかと話し合っている最中の出来事だったそうです。開かずの間の鍵は次期当主であったTの兄が管理していました、だからTの兄以外は開けられない状況だったのです。それなのに、開かずの間は開けられ、二人揃って首を吊っていたそうです。


 それはまたとんでもない話ですね・・・・・・。


――そういう事が起きた事もあって父の死後、もう既にTの兄は持ち家を持っていたこともあって取り壊す予定だったのですが親戚達が勿体ないと騒ぎ出して開かずの間の恐ろしさを知ってもらえれば黙るのではとTは僕に開かずの間を調べてほしいとお願いしに来たのです。


 なるほど、取り壊すためにというのはそういう理由があったのですね。


――僕は友人の頼みというでそのお願いを受けました。Tの兄は渋りましたが一晩だけという理由で開かずの間に泊まらせてもらうことになりました。Tから心霊現象の事を聞いていたので身構えていたのですが聞いていた人の気配やらドアの叩く音は聞こえず、肩すかしを喰らいましたが持ってきたカメラを設置して僕は眠りにつきました。しばらくしてドンドンドンドンドン!! とドアの叩く音が聞こえて目を開けました。


 うわぁ~。怖いですね~。


――僕もあの時はとても怖かったですよ。でも勇気を出してドアの方を見ようとしたのですが、ふと上から人の気配を感じました。


 上から?


――はい、上からです。僕はドアよりもそっちの方が気になって上を見ました。人の足がありました、だらりと下がったその足を見た僕は上で人が首を吊っているのだと理解しました。


 ひいぃぃぃぃぃぃ~!! そ、それでどうなったんですか!?


――その後は記憶はありません。初めての心霊体験だったもので、恐怖のあまり気絶をしてしまいまして・・・・・・。


 あ、あらぁ~。


――おい! 大丈夫か! と血相を変えたTとT兄に起こされた時は太陽が昇ってました。僕が体験した話をするとT達は顔を青ざめさせてました、設置したカメラにはドアを叩く音や女性なのか男性なのかハッキリしない声で開けてと騒ぐ声が撮れていて、怖くて仕方なかったですね。Tはその映像を親戚達に見せたのですが信じてもらえなくて、空き家のまま放置することに。ですが、ある事件が起きて親戚達も屋敷を取り壊す事に賛成し、今は更地になっています。


 ある事件?


――二年前、開かずの間で女子高生が自殺しました。首吊りだったそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る