月光は今宵も誰かの闇を照らす
赤点候補生
第1話 謎の少女
雲一つない晴天の下、山奥にポツンと存在する一軒家。
そこには汗をかきながら剣を振るう少年の姿があった。
「はぁっ!!」
少年が剣を振るうと、斬撃が生まれ目の前にある木を切り倒すことに成功したが、少年は不服そうな表情を浮かべる。
「やはり威力は変わらずか……」
少年の名はカルキ=フランドゥ、乱れた息を整えながら、剣を見つめ己の力不足を嘆いていた。
「確実に今俺は伸び悩んでいる!! 今のままでは強くなることは出来ない……」
何故カルキはここまで貪欲に力を求めているのか、それは今から3年前に心から尊敬する師匠を目の前で亡くしたことであった。
「師匠から受け継いだこの
師匠と旅をしていた時に遭遇した一体の魔物、その強さは桁外れであり尊敬していた師匠が手も足も出ない程であった。
恐怖で身体が動けずにいたカルキを逃がすために、命懸けで戦い抜いた師匠の後ろ姿が今でも鮮明に思い浮かぶ。
「くっ……休憩しないと」
あの映像が思い浮かぶと、吐き気がしてしまい、休憩を挟もうと考え、家に戻ろうとしたその時だった。
不意に近くの森から何やら物音が聞こえたのだ。
気のせいと言われば、そうなのかと納得しそうな程、些細な物音だったがカルキはどうも気になっていた。
(誰かいるのか? 魔物の気配はしないから恐らく人間だと思うが……)
時々魔物が襲いかかってくることもあるがここに住む魔物は弱く、カルキ一人でも対処出来るのである。
一方不安なのが人間であり、単に山登りや山菜を取りに来たのなら良いのだが、犯罪者が隠れ蓑に使う場合もあるのだ。
「物音がした場所に向かうとするか」
体調は優れないが、剣を鞘に納めてカルキは物音が聞こえた森の方に進んでいく。
「そこに誰かいるのか!! もしいるなら返事をしてくれ!!」
いつ襲われても剣が抜けるように警戒しながら木から木へと高速移動していると、カルキと同年代の白髪の少女が俯いて座っていた。
「君大丈夫かい?」
カルキが声をかけると、俯いていた少女が顔を上げた。
顔が赤くほてっており、虚な目をしていて息も乱れていることから少女の体調が悪いのではないかとカルキは判断した。
「はぁ……はぁ……助けてくれません……」
「危ない……すごい熱だ!! 今すぐに安静させなくては」
言い終わる前に少女はいきなり前のめりに倒れそうになり、カルキは慌てて少女を受け止めた。
受け止める際に身体を触ったカルキは、少女が高熱であることがわかった。
急いでカルキは少女を背負い走り抜ける。
「はぁ……はぁ……」
背中越しでもわかる高熱、一分一秒でも早く安全な場所に運ぶため、カルキは自分の家に向かう。
「近くに俺の家があるから安心して……きついだろうけど、もう少しの辛抱だからね」
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