存在しない記憶
10歳の夏だった
白い軽ワゴンが君を
引越し当日ですら僕は
他愛もない会話しか出来なかった
悲しくて、それしかできなかった
いよいよ君は去ってしまった
お気に入りのテディベアを抱きしめて
リアガラスから僕を見つめていた
視界から消えるまで、ずっと
18歳の夏だった
冷房の効いた図書館で、それを思い出した
あの時、呼び止めて
発表会のような勇気で
気持ちを伝えて
途絶えないようにするべきだった
そうすれば今頃は
一緒に受験勉強をして
同じ大学に行って
君の好きな喫茶店に通って…
窓からの日差しは、君の横顔をくっきりと映す
ゆっくりと時間は流れて
僕は幸せを噛み締める
それは存在しない記憶
並行世界の僕が微笑んでいる
白いワンピースがよく似合うね
君の前では、全てが脇役だよ
世界がこんなに美しいなんて知らなかった
知らせてくれたのは、君だ
森のざわめきも、鳥の鳴き声も
熱い日差しも、波のさざめきも
その全てが僕らを祝福しているようだ
くるっと君は回って
眩しい笑顔でこちらを見つめる
それは存在しない記憶
並行世界の僕らが微笑んでいる
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