unknown kiss

天津謙人

unknown kiss

 デートでは無口なあなたも、枕で向かい合うとおしゃべりだった。そこに嘘偽りはないと思ってた。

 でも、それは誰かに見せられない分だけ。私が知っているのは、誰かが知らない一部分。


 独りの休日。街であなたを見かけた。

「明日の夜、部屋に行くよ」

 その時に届いた通知は残業という名の約束だった。


 奪えるものなら奪いたかった。でも、携帯電話をしまったあなたが満面の笑みで握っていたのは。


  私よりもっともっと小さな掌だった。

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unknown kiss 天津謙人 @YORUARUKI

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