人生3周目だけど高校生活で無双するのは大人気ない

高校生B

第0話 ぷろろーぐ

「これからゲームを始める。」

先生から放たれた言葉に空気が張り詰める。

これから始めるゲームはただのゲームではない。

今日からの3年間、時には協力し時には対立し、1位の座を取り合っていく者たちとの前哨戦なのだ。

この高校は一味も二味も違う。

おれは初めての感覚に悦びを覚えた。



突然だが、“シュレディンガーの猫”というお話を聞いたことはあるか。

外からは何も見えない箱に1匹の猫をいれ、ある気体をいれる。その気体は、30分経つと50%の確率で有害な気体となり猫は死んでしまう。だが、もう50%の確率で無害な気体のままになり猫は死なない。

さて、30分経った後、箱を開くと猫はどうなっているか。というものだ。

しかし、実際に箱を開いてみないと猫がどうなっているかはわからない。箱を開かなければ猫は死にもしないし生きもしない。

つまり、ある事象は実際に誰かに観測されない限り起こらないというものだ。この現象はあるモノに似ている。それは「ゲーム」だ。

マリオなどのゲームは画面を見ながらプレイをするが限界がある。例えばドカンの下は、実際にどうなっているか入るまでは絶対に分からないのだ。

この事実がシュレディンガーの猫に関係している。

おっと電車が着いたようだ。また会おう。

 

きっと誰しもが理想の高校生活を思い浮かべ、今この麗らかな日差しの下で行われてる入学式に足を運んでいるはずだ。


 耳をすませば、こつんっこつんっとローファーが楽しそうに音を鳴らしている。

ひらひらと行くあてもないように桜が舞い降りている。

おれは持っていたカルピスを口に含んで考える。

今回の高校生活は、どうするかな。



 「最後に、新入生諸君。これからの3年間を精一杯楽しめ。そして自分の道は自分で示せ。健闘を祈る。本当に入学おめでとう。」


 

 ぱちぱちぱちと拍手が聞こえる。生徒会長の挨拶によって新入生はまたいろいろな想いを巡らせているのだろう。そしてそれはおれにも言えることだ。



 ーおれにとっての“3回目”の高校生活が始まる。

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